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災害3 木造住宅の耐震改修工法の提案と耐震化による被害低減効果

はじめに

2024年1月に発生した能登半島地震では甚大な住宅被害が発生しました。北海道においても2018年胆振東部地震では最大震度7を観測し、多数の住宅被害に見舞われました。また北海道の太平洋沿岸では、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大地震が高い確率で発生すると指摘されています。こうした大規模地震による住まいの被害軽減を図り、安全で安心な生活を確保するため、道内の住宅の耐震化を促進する取組みが求められています。

道総研の取組について

道総研では、これまで住宅の耐震化技術に関わる研究や、地震発生時の住宅被害を予測する手法の研究など、住宅の耐震化に関する研究を進めています。北海道における耐震化の取組みを進めるため、道や市町村が耐震改修促進計画に基づいて実施する耐震化事業に協力するとともに、道総研の重点研究として木造住宅の耐震改修工法を提案し、耐震改修の促進による住宅被害の低減効果を検証しました。

木造住宅の耐震改修工法の提案と耐震化による被害低減効果

耐震性の低い住宅の世帯主は高齢者が多いため、費用負担や工事による生活への負担を軽減できるよう、低廉で工期が短く、住みながら工事が可能な工法を提案しました(図1)。次に提案した工法を用いて耐震改修した場合の被害軽減効果を住宅被害の予測手法により検証しました。札幌市の直下型地震で想定される月寒背斜※に関連する断層の場合、住宅被害が全半壊16,825棟、被害額が2,564億円と試算されます(図2)。提案した工法によって当該地震で被害が出ると想定される住宅を対象に耐震化する場合の改修コストは175億円であり、耐震化後の被害は1,932棟、被害額は273億円に低減されます。耐震化前に比べて、住宅被害は約89%低減、耐震化後の改修コスト+被害額は約82%低減できることがわかりました。

図1 簡易でローコストな耐震改修工法の提案
図1 簡易でローコストな耐震改修工法の提案
図2 月寒背斜断層の想定地震における 住宅耐震化による被害軽減効果
図2 月寒背斜断層の想定地震における住宅耐震化による被害軽減効果

背斜:地殻の変動によって横方向に圧縮されると、波形に曲り、盛り上がった箇所を背斜 (はいしゃ)、沈んだ箇所を 向斜 (こうしゃ) と呼びます。

今後の取組み

道総研では今後想定される大地震に対しても安全な北海道の維持に寄与するため、新たに提案した工法の普及に加え、講習会や防災訓練などで耐震化促進の意識啓発に取り組んでいます。また耐震改修のポイントをわかりやすくまとめたマニュアルを道総研のHPで公開しています。

北海道の木造住宅耐震改修技術マニュアル

 

(森松信雄 建築研究本部 建築性能試験センター 安全性能部、
竹内慎一 建築研究本部 北方建築総合研究所  地域研究部)