
第36話 北海道の住宅の断熱と防火
冬の寒さが厳しい北海道の住宅で、外気と室内の「断熱」が強く意識されるようになったのは、1953年の北海道防寒住宅建設等促進法が制定されてからです。当時は、もみがら、おがくず、炭殻なども断熱材として使われ、家を暖かくし、水道の凍結を防ぎ、厳しい冬を少しでも快適に過ごすことが期待されていました1)。1960年代に入り、グラスウールなど、工業製品である断熱材が木造住宅に普及すると、暖房費を削減する経済的な効果にも注目されるようになりました1)。さらに1970年代の二度のオイルショックによってエネルギー価格が上昇すると、暖房費の削減は大きな関心事となり、断熱と気密の重要性が広く知られるようになりました。このように北海道の住宅は、燃料を大量に使って寒さに対処する住まいから、断熱によって熱を逃がさない住まいへと姿を変えていったのです(写真1)。
![]() | ![]() |
また、1979年に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」が制定され、翌1980年に住宅の省エネルギー基準が示されました。これを契機に、住宅の断熱性能は基準や数値で考えられるようになりました。その後、1992年及び1999年の次世代省エネルギー基準改正により、目標とされる断熱性能が引き上げられるにつれて、北海道の住宅にはより高い断熱・気密性能が求められるようになりました。
2000年代以降、断熱には省エネルギーに加えて、室内の温度差の低減や結露防止など、健康で快適な住環境をつくる役割も重視されるようになりました。さらに国内外で地球温暖化対策や脱炭素化が求められるなか、2020年代には、年間の一次エネルギー消費量の収支実質ゼロを目指すZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)をはじめ、住宅のエネルギー消費そのものを減らすための高断熱化が進んでいます。2025年には新築住宅の省エネルギー基準への適合が義務化されました。北海道の住宅の断熱化は、寒さを防ぐ工夫から、省エネルギー、快適性、そして脱炭素を支える重要な性能へと、その役割を広げてきたのです(写真2)。
こうして断熱の意味が変わるなか、外壁などの住宅部材も変化してきました。断熱工法によって断熱材の設置位置が異なり、断熱材の種類や厚さも増えていく中で、住宅部材の構成は次第に多様化していったのです。
一方、住宅含む建築物で起こる火災から財産・人命を守るための建築基準法の防火規定にも大きな変化がありました。2000年の法改正による防耐火構造の性能規定化です。それまでは、防火規定の対象となる外壁などの部材について、使用できる材料や構成が定められていました。たとえば、不燃性のグラスウールなどの断熱材は使用できた一方、可燃性を有する発泡プラスチック断熱材は、仕様によっては使用できない場合がありました。断熱性能を高めようとしても、防火性能の面から材料や構成に大きな制約があったのです。
性能規定化により、要求される防耐火性能を実験等で確認し、大臣認定を取得した構造であれば、多様な材料や構成を用いることができるようになりました。これにより高断熱化と防火性能の両立が図りやすくなりました。
しかし、ここで新たな課題が生じました。多様化する外壁の断熱仕様、すなわち、断熱工法・断熱材の組合せに対し、防火性能がどのように影響を受けるのか、その関係性は十分に明らかになっていなかったのです。そのため、新たな外壁を開発する場合や、大臣認定のための性能評価を行う場合には、断熱仕様ごとに実験を行い、そのつど防火性能を確認せざるを得ませんでした。数多くの実験が必要となり、開発・評価にかかる企業の経済的負担は大きくなりました。こうした状況は、さらなる省エネルギー性能の向上を目指して高断熱化を進めるうえで、一つの壁となっていました。
道総研は、性能規定化の法令改正に伴い、大臣認定を取得するための防耐火構造の性能評価を行う指定性能評価機関となり、開発された住宅部材の防火性能評価に取り組んできました。同時に、研究機関として、北海道の住宅にとって重要な断熱と防火の関係性を明らかにする研究にも取り組んできました。この研究で明らかになった断熱と防火の関係性は、全国の指定性能評価機関での性能評価に活用され、試験体数を減らしながらも、より合理的に防火性能の評価ができるようになりました。また、高い断熱性と防火性能を兼ね備えた新しい住宅部材の開発にもつながっています。当研究所が開発した「北総研防火木外壁」(写真3)は、その一例であり、北海道だけでなく全国の工務店で活用されています。
URL https://www.hro.or.jp/building/about-us/koho/develop/hokusoken_mokugaiheki.html
![]() |
北海道の厳しい寒さのなかで培われてきた断熱の技術をさらに発展させ、断熱と防火を両立した、より安全で快適な住宅を北海道から全国へ届けるため、これからも研究と技術開発に取り組んでいきたいと考えています。
1)北海道外断熱建築協議会編著:住まいの住宅読本 夏・冬の穏やかな生活づくり,彰国社,2001年
[2026年10月21日 公開]
- この記事に関するお問い合わせ
- 道総研 経営管理部 企画・広報室
- TEL 011-747-2900
- お問い合わせフォーム[こちら]



