材料技術部 稲野 浩行・ 板橋 孝至・堀川 弘善・赤澤 敏之
環境エネルギー部 富田 恵一
環境エネルギー部 富田 恵一
■研究の背景
道内には現在10カ所のごみ溶融固化施設があり、ごみを溶融スラグ化するときに大量の溶融飛灰が発生します。 溶融飛灰は塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)などを主成分とし、重金属である亜鉛(Zn)、鉛(Pb)を含んでいます。 道内のごみ溶融方式は大きく分けて灰溶融とガス化溶融があり、昨年までに行ったX線光電子分光分析法(XPS)などによる化学的評価では、 ごみ溶融方式によって飛灰の化学的性質が大きく異なることが明らかになりました。 その結果をもとに本年度は金属資源回収のためにpHを変えた水溶液で処理を行い、その濃縮や分離効果について検討しました。
■研究の要点
1.熱分析手法を加えたごみ溶融飛灰の総合的な評価
2.灰熔融とガス化熔融の代表的な溶融飛灰の水、および酸、アルカリ処理試験
3.処理残渣の蛍光X線分析(XRF)、X線回折(XRD)、XPS、電子顕微鏡(SEM)による評価
4.処理後の

溶融飛灰の電子顕微鏡(SEM)写真
溶融飛灰の処理試験
処理前
水処理後
■研究の成果


1.水、および酸、アルカリ処理により、溶融飛灰に含まれる各成分の溶出特性を把握しました。
2.灰溶融の飛灰は可溶性塩分が多く水処理で重金属類の濃縮ができましたが、ガス化溶融の飛灰は
不溶成分が多く、濃縮が困難であるといった金属の濃縮、分離に関する基礎的知見を得ました。
3.一般的に溶解度の高いNa塩など不溶性のものに関して、XRD、XPSなどによる総合的な評価により、
不溶化の原因を考察しました。その結果、Na塩は粒子表面に存在しており、溶解度の低い化合物
を形成していることが明らかになりました。
道内各溶融固化施設、北海道大学
※本研究で使用したX線回折装置は、JKA補助事業により整備されました。
※本研究で使用したX線回折装置は、JKA補助事業により整備されました。