水産研究本部

試験研究は今 No.1「ホタテガイやイガイ等はなぜ毒化原因と貝毒の発生予測について」(1989年8月24日)

試験研究は今 No.1「ホタテガイやイガイ等はなぜ毒化原因と貝毒の発生予測について」(1989年8月24日)

Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A ホタテガイやイガイ等は、なぜ毒化するのですか。また、貝毒の発生時期は予測できるのでしょうか。

プロトゴニオラックス属とディノフィシス属のプランクトンの図
  ホタテガイ、ホッキガイ、イガイなど多くのニ枚貝は主にプランクトンを餌としています。このプランクトンの中には毒を持ったものがあり、これを食べた貝に被害がないのに、貝を食べた人間や動物が被害を受けるものもあります。これは、貝に蓄積されたプランクトンの毒のせいであり、地域によっては「夏の貝を食べると腹痛になる」と言われたり、外国でも「Rのつかない月(5~8月)のカキは食べるな」ということわざもあります。

  現在、問題となっている貝毒には2種類あり、主にプロトゴニオラックス属のプランクトンが原因である「麻ひ性貝毒」、ディノフィシス属のプランクトンが原因である「下痢性貝毒」があります。麻ひ性貝毒では死者がでる場合もあり、先日も青森県で定置網に付着していたイガイを食べて一人が死亡するという事件がありました。下痢性貝毒では、日本海沿岸で海水浴に来た人がイガイやコタマガイを食べて腹痛や下痢を起こしたことがあります。

  また、貝に一度蓄積された毒は原因プランクトンがいなくなってもなかなか消えませんが、ホタテガイの場合は、毒は中腸腺(通常はウロと呼ばれている)という消化器官に集中しており、毒が一定レベル以下になると、貝柱だけを加工して出荷できるようになりました。麻ひ性貝毒は水溶性(水に溶ける)毒であり、ウロを付けたまま煮てからウロを除いても汁に毒が溶けてしまいますし、下痢性貝毒は脂溶性(水に溶けない)毒で、煮ても焼いてもほとんど毒性は変わりません。毒をなくす方法もいろいろ研究されてきましたが、今のところ良い方法は見つかっていません。

  現在、漁業者が養殖行程の工夫や出荷時期の調整を的確に行えるよう、日本海に2点、噴火湾に12点、日高沖に5点、オホーツク海に3点の調査点を設け、定期的にプランクトンを採取し、貝毒プランクトンの出現状況を調査し、その消長を予報しています.これらの調査結果は、支庁、指導所など関係機関に速報として出していますので、ご利用ください。
(函館水試 増殖部)

トピックス

「ヒラメ稚魚、元気に旅立つ」〜ヒラメ放流技術開発事業

   人工種苗ヒラメの最も良い放流技術を調査するため、7月26、27日両日、余市町「登川」河口付近から栽培センターで飼育した約5センチメートルの人工種苗ヒラメ約6万5千尾を放流。8月以降も引き続き放流の予定です。放流ヒラメは、胸ビレを一部カットしであり、採補・発見した方は、水産試験場、水産指導所、漁協にご連絡願います。
(中央水産試験場)

「ヒラメ人工種苗の量産技術開発試験、順調に進む」

  今年度の量産化試験は順調に進んでおり、4〜5センチメートルのヒラメ人工種苗約20万尾が得られました。これらの種苗は利尻、焼尻、余市に9万尾、吉岡、熊石、大成に3万尾が配布、また6万5千尾は中央水試により放流されました。この試験は今年度で終了しますが、来年度から高い品質の種苗を省力、低コストで大量生産する技術開発のための企業化試験に移行する予定。
(親堵漁共総合セソター) 

「天然マコンブに関する公開討論会開催」〜マコンブについて熱心に討論

  6月30日、南茅部町福祉センターにおいて、100名以上の漁業関係者が参加し、函館水試の佐々木主任研究員から「コンブの生態と道内における増殖対策の現状」の報告が行われるなど、天然マコンブ資源の減少要因や、今後の増殖対策について熱心な意見交換が行われました。
(函館水産試験場)

「天売地区水産試験研究プラザ開かれる!」〜島の特産品開発など意見交換

  7月14日、留萌支庁管内天売島で、試験研究プラザのミニ版を開催。当日は、漁協関係者や水産高校の先生など多数が参加し、島の特産品開発協力など、水産加工技術についての要望、意見が水試に出され、漁業者には情報提供の要請や加工コンテストの開催など、活発な意見交換が行われました。
(稚内水産試験場)

「保護水面の一斉調査はじまる」

漁の画像
  サクラマス幼魚の保護と増殖を目的とした保護水面管理事業の効果確認と効率を高めるための調査が8月一杯をめどに全道20の河川で行われています。
(水産ふ化場)

発刊のことば

  全道各地で水産試験研究プラザを開催したところ、多くの皆さんから「わかりやすい広報を」との要望が出されました。こうした声にお応えするため、「試験研究は今」を発行することといたしました。系統通信での配布の他、水産技術普及指導所にも備えてありますので、広くご利用いただければ幸いです。