水産研究本部

試験研究は今 No.2「ホタテガイの毒性はどのように検査するのか。また、簡単に計る方法」(1989年9月1日)

試験研究は今 No.2「ホタテガイの毒性はどのように検査するのか。また、簡単に計る方法」(1989年9月1日)

 Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A ほたて貝の毒性はどのように検査するのですか。また簡単に計る方法はありますか。

  ほたて貝など二枚貝に含まれている毒物の量は非常に少なく、その量を計ることは大変な作業です。特に生物が作り出す毒の場合、極微量で毒性をしめす場合が多く、その成分は単一のものから複数のものがあり、その組み合わせによって化学的な分析では毒性値を判定できない物が多くあります。このようなとき、生物学的定量法が用いられます。

  貝毒の場合は、WHO(国連世界保健機構)の専門家会議における勧告にもとづき厚生省が定めたマウス(はつかねずみ)試験方法により検査が行われています。検査方法は、すりつぶした貝の可食部と中腸腺(ウロ)からとった液を薄めて、それをマウス腹部に注射し、マウスが死ぬまでの時間とその液の薄めた度合いなどから毒量を測定します。

  そのため、この検査は、環境条件が一定の場所で、質のそろった雄のマウスを必要とし(雌は使用しない。性周期、妊娠などにより感度に差があるため)、検査機関に貝を持ちこんで結果がわかるまで、麻ひ性貝毒では最低1日、下痢性貝毒では最低3日かかり、これら一回の検査で80尾以上のマウスが必要となります。

  得られた結果はマウスユニット(MU)という単位で表わされます。

  同じ1MUでも麻ひ性貝毒と下痢性貝毒とでは異なり、麻ひ性貝毒の1MUとは、体重19〜21グラムのマウスを15分間で死亡させる毒量のことであり、下痢性貝毒の1MUとは16〜20グラムのマウスを24時間で死亡させる毒量をいいます。

  これを体重60グラムの人間に換算しますと、麻痺性貝毒により死に至る量は3,000〜4,000MUと言われております。

  水産庁の通達では、可食部において麻ひ性貝毒では4MU/g以上、下痢性貝毒では0.05MU/g以上でた場合、原則として水揚げの規制を行うよう指導しています。

  現在、こうした生き物を使った試験にかわる方法として、毒性分の化学的性状を明らかにすることにより、簡単にその毒量をはかる機器分析法の研究が行われており、マウス試験法との相関度の高い方法も開発されつつありますが、国が定める検査法として確立されるには、まだ時間がかかるようです。
(中央水試加工部)

トピックス

「ヒラメ標識放流始まる」~放流効果への期待高まる

ヒラメ標識放流始まる
  今年、道立栽培漁業総合センターで試験生産されたヒラメ人工種苗20万尾のうち6万5千尾が石狩湾海域で標識放流されました。標識を付ける作業は、7月20日から23日にかけて栽培センターで延50人のセンターや水試の職員らにより実施されました。

  標識方法としてタック打込みや、合成樹脂(ラテックス)による入墨などがありますが、今年は右図のように、胸びれをはさみでカットする方法がとられました。70ミリメートルサイズのヒラメは無眼側の胸びれをカットし、また50ミリメートルサイズのヒラメについては有眼側の胸びれをカットしています。

  胸びれカットしたヒラメを漁獲した時は、近くの漁業協同組合、水産試験場、栽培漁業総合センター、または最寄りの普及指導所にご連絡願います。
(栽培センター)

「イワシ煮汁の有効利用に関する成果報告会」~多数のご参加を

  釧路水試では、フィッシュミール製造工程において排出されるイワシ煮汁から、天然調味料を製造する技術についての成果報告会を10月上旬に開催を予定しております。道内のミール業者など多数の関係者の出席を期待しております。
(釧路水産試験場)

「オホーツク海のケガニ密度調査終わる」~ケガニ漁に明るいきざし

漁の写真
   今年6月24日から7月23日まで、オホーツク海でケガニの密度調査が網走、稚内両水試共同で実施されました。この結果、甲長8センチメートル以上の軟甲ガニ(通称、脱皮ガニ)の高密度域が枝幸沖から雄武沖を中心に広範囲に広がっていることが確認されました。これらの軟甲ガニは来年には堅ガニになりますので、平成2年は海況の良い地区が多いと期待されます。また、甲長8センチメートル未満のケガニの密度も各海域で比較的高く、今後のオホーツク海のケガニ資源に明るいきざしが見られます。
(網走水試、稚内水試)