水産研究本部

試験研究は今 No.6「ホタテの資源量が危機的状態に陥っていると判断する基準は何か」(1989年10月6日)

試験研究は今 No.6「ホタテの資源量が危機的状態に陥っていると判断する基準は何か」(1989年10月6日)

Q&Aは平成元年度水産試験研究プラザの質問からです。

Q&A ホタテの資源量が危機に陥っていると判定する基準はなんですか。

北海道ホタテガイの漁獲量の推移
  ホタテガイの漁獲量の変遷をみると、過去に大きな変動が繰り返されてきたことがわかります(下図)。これは、ホタテガイが何年かに1度大発生すると、それを獲り尽くすまで漁獲し、また、次の大発生を待って漁獲するということが繰り返されてきたためです。

  このような大発生は、その年の自然条件に左右されるので、常に期待できるわけではありません。そこで自然の影響を出来るだけ少なくして、人間が積極的に生物生産に関与しようとしたのが、種苗放流と漁場管理の考え方です。

  こうした種苗放流と漁場管理に必要なのが資源量調査です。その方法は、一定面積に区画された漁場を桁網で引き、入ったホタテガイを年令別に仕訳し、殻高、重量を測り、年令毎のトン数を算出し、漁場全体の資源量を推定するというものです。

  漁場を判断するに当っては、明確な基準はありませんが、まず生息分布密度が極端に少ないかどうかが問題になります。その密度が、1平方メートル当り1個体未満では良い漁場とは言えません。

  次に、地まき放流以外の漁場において、1、2年貝の占める割合が2割以下になって、6年以上の老貝の比率が高い場合には資源が危機的な状態にあります。もちろん、オホーツク海のように、地まき放流した1年貝を3年後に漁獲する、いわゆる輪採方式を採用している漁場では、今述べた年令組成はあまり問題になることはありません。

  このほか、得られた知見によると、漁場の危機的状況を知る兆候として貝が小型になるということがあげられます。さらに専門的になりますが、殻の内側が着色したり、貝柱に斑点がみられたり、生殖巣に異常があるなどといった場合、注意する必要がありますので、最寄りの水産技術普及指導所か水産試験場にご相談ください。

  地まき放流の場合の資源量は、放流した貝の生残数と1個体当りの重量によって決まります。漁獲前の資源量調査で生残率が2割以下であったり、貝の成長が悪かった場合には、放流貝の質や放流方法、場所の選定、密度の調整、ヒトデ駆除など漁場管理について検討する必要があります。
(稚内水試)

トピックス

天皇、皇后両陛下 道立水産ふ化場をご訪問

  9月29日午後、第25回全国身体障害者スポーツ大会にご出席のため来道された天皇、皇后両陛下が道立水産ふ化場をご視察になりました。
 
  竹田水産部長の先導のもと、前田場長ら職員による説明に熱心に耳を傾けられ、ニジマスやサケなどをご覧になりました。特にハゼの前では研究者のお立場から専門的な話をされ、ご視察後、「道立水産ふ化場では、新しい研究成果を聞き、将来への夢を感じさせられました。特に研究員の方々が大変わかりやすいご説明をしていただきました」と感想を述べておられました。
(水産部)

平成元年度オホーツク海のサンマ漁況について

9月21日、網走水試ではオホーツク海のサンマの漁況予報を発表しました。
  • 太平洋海域における主な漁場は8月中旬にはウルップ島沖からシンシル島沖に形成された。その後、漁場は南西に移動し色丹島、落石沖に、9月上旬には襟裳岬南沖にも形成された。漁獲量は昨年同期の1.5倍(4万5千トン 9/10現在)で大・中型魚が主体であった。
  • オホーツク海で漁獲の対象となる群は例年、中・小型魚で、この群は南部千島太平洋側水域へ接岸したものの一部が移動回遊するものと推定されている。南部千島沖に北上した来遊量は近年並の低水準であるが、昭和58年を上回っていた。
  • 9月上旬の水試調査船などの調査結果によると、オホーツク海沿岸域におけるサンマは62~63年よりやや多く中・小型魚が主体であったが、近年見られなかった事象として刺網により大型魚が数尾漁獲された。一方、9月中旬、枝幸沖25海里付近で若干の中・小型魚が発見された。今後の漁況としては、
  1. 魚体は中・小型魚が主体となろう。
  2. 来遊量は低水準ではあるが、58年並みであろう。
  3. 漁獲量は近年の漁獲努力量の減少を考慮すると58年を下回るであろう。
(参考)オホーツク海のサンマ漁獲量の推移 63年 45トン、62年 80トン、61年 1246トン、60年 831トン、59年 189トン、58年 3528トン、57年 20039トン
(網走水試)