水産研究本部

試験研究は今 No.27「新規水試事業紹介」(1990年4月13日)

試験研究は今 No.27「新規水試事業紹介」(1990年4月13日)

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平成2年度事業紹介

平成2年度の道の事業のうち、今回は試験研究機関が中心になって実施される二つの新規事業について紹介します。

特定海域養殖業推進調査

 北海道は波浪が厳しく、養殖に適した穏やかな湾があまりないことから魚類の海中養殖技術の開発が遅れています。そこで、海域特性の似たブロックごとに養殖場所や養殖技術を検討するのが本調査のねらいです。

1:太平洋ブロック
このブロックではサクラマスの海中養殖技術の確立と新たに海中養殖が可能な魚種の検討を課題にして調査を行います。
サクラマスの海中養殖はこれまでも各地で取り組まれており、その技術についてはある程度確立されていますが、輸入水産物の急増により価格が下降し、経営が不安定な状況にあります。この対策としては、魚体を大きくして出荷するか、単価の高い時期に出荷をずらして価格調整を行うかの二つの方法が考えられます。
  このため、サクラマスの稚魚を夏を越すことのできる太平洋の海面で、ある程度の大きさまで中間育成し、冬を越す際に日本海に移して飼育を行います。この方法によると、従来、日本海で秋から春(10~6月)まで海中飼育した魚より大型のものが生産でき、出荷の時期も通常の6月から翌年の4月頃にずらすことができ価格調整を行うことが可能となります。また、この試験では魚の成長度合を調べるほか、移送方法も検討し、地域ごとの役割や収支について総合的に調査することにしています。
  また、平成3年度以降は、バイオテクノロジーによってつくりだした三倍体の種苗(成熟しないので大きくなる)を用いて同様の試験をするほか、新たな魚種についても検討していく予定です。

2:北部日本海ブロック
  日本海における海中養殖魚がサクラマスだけでは価格が不安定なため、第二の対象種としてヒラメの養殖技術の確立が望まれます。このブロックでは、ヒラメの最適な生育条件を探るため、イケスを設置する場所の環境や底質条件の検討、また、管理がしやすく、時化のときにヒラメの斃死が少ないイケス形状や飼育管理方法の検討を行います。また、道内における養殖用人工種苗の生産や、水温の高い海水を利用できる地域での中間育成による大型人工種苗の生産についても調べ、収支についての総合的な調査を行います。
    • サクラマス海中飼育とヒラメ中間育成

磯焼け漁場有効利用技術開発

  大型の海藻類がほとんど見られない磯焼け現象は、種々の対策が講じられていますが、まだ解決されるにはいたっていません。そこで、磯焼けの原因の一つと考えられるウニ等の食圧を軽減し海藻群落の形成を図るとともに、新しい観点から磯焼け漁場における未利用資源の有効利用技術の開発を行うのが本事業です。

  方法としては、まずその原因とされるウニの食害を防止するため、海藻群落の形成具合の調査、ウニの侵入を防止するため転石地帯でも簡単に設置や移動ができ、しかも耐波性のある安価なフェンスの開発、コンブの発芽時期や水温とウニの移動距離の関係を考慮した効果的なウニの駆除方法の検討を行い、これによって海藻群落の長期形成を促します。また、磯焼げ漁場にいるウニを有効に利用するため、餌料用コンブの養殖技術と、それをウニに与える際、容易に移動できるシステムの開発試験を行います。さらには養殖コンブのない時期における餌料の検討やウニの身入りを良くする手法などについて総合的な調査を行います。
    • 磯焼け対策概念図