水産研究本部

試験研究は今 No.29「ミズダコの一生について」(1990年5月11日)

試験研究は今 No.29「ミズダコの一生について」(1990年5月11日)

Q&A? ミズダコの一生について教えてください。

  北海道周辺に分布するミズダコは、水深150メートル前後からごく沿岸にかけて生息していますが、成長は早く、満3年で10キログラム以上の成体になります。
    • ふ化直後のミズダコ稚仔と卵を守る親ダコ
ミズダコ
  ミズダコの稚仔は、ふ化直後は重さが0.05グラムで、主に水深10~20メートルの層を漂流しており、成長するにしたがい下層に移行して着底し、底生生活に入ると推定されています。着底した稚ダコは、岩礁地帯や海底に散在している空貝や自然石の隙間などを生活の場にします。
 
  体重がおよそ10キログラム以下の未成体は、主に水深60メートル以浅の岩礁と砂泥質が複合し、餌となる生物が比較的豊富な地帯に「縄張り」を作っており、岩穴や身体を潜められる場所をその拠点としています。この縄張りを持つ行動は、交接期前まで続き、他のタコによって縄張りが侵されると、排斥のため、直ちに相手を威嚇し、激しい闘いが行われます。

  食性は雑食性で、行動範囲が広く捕食活動はきわめて活発です。特に貝類、甲殻類を好み、魚類、多毛類、イカ類なども捕食しますが、交接期以降は餌をとりません。
この未成体の行動を標識放流試験によって調査しましたが、その結果、放流地点付近にとどまるものと、各方面へ複雑に移動するものとが見られました。このことは「縄張り」の形成が食性と大きく関わっていて、餌が少ない所では生活できないため、こうした場所から離れていく傾向があることを示しています。

  体重10キログラム以上の成体になると、夏頃から交接のため沖合へ移動します。交接は11~1月に行われ、主に水深60メートル以深が交接の場になります。

  交接前の雄の生殖巣には精巣の一部に白い螺旋状の精子の入ったカプセル状のものが形成されます。交接期になると、八本の腕のうち特殊化した交接腕の先端で、そのカプセルを挟み、雌の身体に挿入して交接を終えます。

  交接期における雌は、卵巣が未熟のままで、成熟した雄と交接しますが、交接を終えると、雌の卵巣は急速に発達します。その後、雄は沖合へ移動して死にますが、雌は産卵準備のため岩礁地帯の産卵場へ移動します。

  産卵期は6~7月で、岩礁地帯の岩穴や岩棚に卵を産みつけますが、卵数はおよそ6万粒(一房250~300粒)で、ふ化するまで親ダコが卵を保護します。

  ふ化するまでには6~7か月間かかり、日本海では2~3月頃、道東太平洋及びオホーツク海ではそれより2~3か月遅れてふ化します。これは、毎日の水温を加えていった温度の合計が2千度以上になるとふ化するためで、日本海より低水温の海域では、ふ化までの期問が長くなります。

  ミズダコの成長は、ふ化直後0.05グラムのものが12か月経過するとおよそ40グラム、14か月で53グラム、21か月1キログラム、24か月1.7キログラム、36か月14キログラム以上に成長することが明らかにされています。

  ミズダコの寿命は、雄は交接後数か月で死ぬため、ふ化後40か月、雌は卵の保護に要する時間を加えると48か月位生きるものと推定されます。
(中央水試)

トピックス

「平成2年留萌地域水産試験研究プラザ」を開催

  稚内水試と留萌支庁主催の試験研究プラザが4月20日、留萌市で開催され、留萌管内の漁協、水産加工関係者など100人が参加し意見交換が行われました。
 
  会議では、はじめに、漁業資源部門、増殖部門、加工部門の3分科会が開かれエビ、タコ資源に関することや磯焼け対策などについての討議が行われました。この後、全体会議で分科会報告があり、全体質疑の後、閉会しました。

  留萌支庁管内では、この地域プラザのほか、離島プラザ、ミニプラザを開催する予定です。
(稚内水試)