水産研究本部

試験研究は今 No.34「魚の年齢の調べ方について、また、年齢を調べることで何がわかるか」(1990年6月22日)

試験研究は今 No.34「魚の年齢の調べ方について、また、年齢を調べることで何がわかるか」(1990年6月22日)

Q&A? 魚の年齢の調べ方について教えてください。また、年齢を調べることによって何がわかるのでしょうか。

図1
  魚類の成熟年齢や寿命を推定したり、魚獲物の年齢組成を調べることは、資源状態を判断したり、資源変動を予測する上で、欠かすことのできない重要な調査項目です。

  この資源量推定に魚群の年齢が重要なことを指摘したのはノルウェーのヨルトが最初でした。1914年、春ニシンを調査したヨルトは漁況の変動が年級群(ある年に同時に生まれた魚群)の大きさによることを明らかにしました。それ以来、資源量推定には様々な手法が開発されましたが、その多くは年齢を基本的な要素としています。しかし、年齢を調べるといっても、まだまだ障害があり、年齢の査定法が確立している魚種は多くはありません。

  それでは、魚の年齢はどのように調べるのでしょうか。魚の年齢は一般的には鱗や耳石(脳の両わきにある平衡石の一つ)などに現れる輪紋の数によって調べますが、年輪が現れるもの(年齢形質)として、最初に用いられたのは鱗であり、1684年にレーエンフックがウナギの年齢を鱗の年輪によって調べています。鱗は採取しやすく保存も簡単なため、現在でもサケ・マス類、ニシンなど多くの魚種で用いられています。
図2
  また、耳石を年齢形質としている魚にはサバ、スケトウダラ、マダラ、マガレイ、ソウハチなどがあります。
  しかし、魚によっては鱗や耳石では輪紋を読み取りづらいので、他の方法で年齢を査定しているものがあります。たとえば、カスベは脊椎骨の断面に形成される年輪を調べますし、ブリは鰓蓋骨(鰓を覆っている骨)、アブラツノザメは背鰭にある棘を年齢形質として使います。

  海獣類では、ヒゲクジラ類(ナガスクジラなど)の耳垢に、また、マッコウクジラやアザラシの歯に年輪が形成されます。

  このように年齢を調べるには、まず、年齢形質として何が最良かを検討しなければなりません。しかし、せっかく輪紋の現れるものをみつけても、それが1年に1本とはかぎらず、周期的に輪紋を形成するかどうかを調べなければなりません。たとえば、カサゴやレンコダイは1年に2本の輪紋が形成されますし、サクラマスには偽輪(年輪と年輪の間に形成される輪紋)が多いことが知られています。

  さて、耳石による年齢査定法が確立しているスケトウダラでは、漁獲物の年齢組成を用いて資源量が計算されています。

  それによると、1988年のオホーツク海南西域における漁獲物の約8割が5~7歳魚で占められており、漁期始めの漁獲対象の資源量は15万トンと計算されました。

  この値はこれまでの推定資源量より減少しており、今後も減少する可能性のあることを示しています。

    • 図3
図4
  ところで、1971年以降、耳石には微細な輸構造があることが様々な魚類の稚魚の調査で確認され、これが1日に1本形成される日周輸であることがわかってきました。魚類の資源量は稚仔魚の生活によって決定するといわれていますので、この日周輪を調べることによって、稚仔魚の成長率や生残率をもとめることができることから、今後の水産資源研究に有効な方法として注目されています。すでにニシンや大西洋タラ、マイワシなどでは耳石日周輪を用いて成長率が計算されていますし、アンチョビー(イワシの仲間)では採集した稚仔魚の日周輪から、誕生日を計算し、生残数の推定に用いたりもしています。
(釧路水試)