水産研究本部

試験研究は今 No.35「ホッキ稚貝の減耗はどうして起こるのか。稚貝調査から何がわかるか」(1990年7月6日)

試験研究は今 No.35「ホッキ稚貝の減耗はどうして起こるのか。稚貝調査から何がわかるか」(1990年7月6日)

Q&A? ホッキ稚貝の減耗はどうしておこるのか教えてください。また稚貝量調査から何がわかるのでしょうか。

ホッキ稚貝の減耗

  ホッキガイは、水深5メートル前後の海底の勾配が比較的緩やかな砂浜海岸に分布する二枚貝です。産卵期は海域により異なりますが、おおむね4~7月で、水温が10~15度になる時期です。ホッキガイは卵から艀化すると約1か月間、浮遊幼生として生活します。苫小牧沖の浮遊幼生は主に岸から1000~1500メートル以内に分布し、0.3ミリメートル前後にまで成長すると、海底に沈着し親と同じ生活様式をとります。沈着は、これまでの調査結果から、水深7~9メートル(岸から500~800メートル)の海底に多いことがわかっています。

  写真の右側は、沈着後約3か月を経過した当年稚貝です。この大きさではまだ、砂の中に深く潜ることはできないので、海水の流れによって、砂粒と一緒に動かされてしまいます。このようにしながら稚貝は成長し、沖側から成貝が多く分布する水深5メートル前後の場所へと、しだいに運ばれてきます。しかし、その大部分は陸に打ち上げられたり、ホッキガイが生活できないような泥場に運ばれたり、さらには肉食性の巻貝類やヒトデ類に捕食されたりして減耗します。そして、ごくわずかな稚貝が漁場付近に生き残って、漁獲の対象へと成長していきます。

  写真の左側は、沈着してから約1年たったホッキガイです。このくらいの大きさになっても、時化の時は陸に打ち上げられます。この対策として、これまで離岸提などの構築物の設置が行われてきました。しかし、砂が堤の内側にたまる場合があり、この問題を解決し、減耗防止技術を確立するために、現在、調査研究がつづけられています。

  また、これとは別に、人工的に生産した稚貝やポンプ採集した稚貝を中問育成して、3センチメートルくらいにまで育ててから放流する試験も進められています。これは、砂の入った、網蓋付きのFRPの箱に稚貝を入れ、餌の多い場所に沈める方法です。2年貝までの中間育成で50~70%の生残率が得られており、有効なことが確かめられていますが、害敵からの保護や箱の中に有機物が蓄積してしまうなどの問題点のほか、コストがかかりすぎるという課題があり、実用化試験はこれからです。
    • ホッキガイの沈着

稚貝量の調査

  ホッキガイの資源量調査は、現在、7.5cm以上の貝に着目して行われていますが、この方法では7.5cm以下の資源量がわかりません。資源管理のためには、年齢別の資源把握を算出することにより、毎年の漁獲量を決定する必要があります。そのためには、稚貝の発生量を把握しなければなりません。

  しかし、これを技術として確立するためには、稚貝から加入に至る期間の減耗量を正確に把握しなければなりません。
 
  減耗量は地域差があるので、モデル海域を設定することによって減耗量の推定方法を確立できれば、他の海域でも利用することができます。
(函館水試室蘭支場)
    • 苫小牧沖におけるホッキガイの誕生から1歳になるまでの生活

トピックス

貝毒シンポジウムを開催

  6月26日(火曜日)札幌第2水産ビルで、中央水試主催のシンポジウム「北海道における今後の貝毒対策のために」が開かれました。現在、ホタテガイ漁業は貝毒問題で大きく揺れていますが、こうした中で、生産から加工、流通に至るまでの各業者と大学や道立試験研究機関の研究員等が約80名集まり、これまでの貝毒に関する知見を整理し、今後の課題設定のための情報交換を行いました。

  シンポジウムは趣旨説明後、6項目の課題について討論されました。課題は次のとおりです。
  1. ホタテガイ毒化予知について(函館水試)
  2. 下痢性貝毒試験法の問題点-遊離脂肪酸の毒性について-(北大水産)
  3. 食品衛生における貝毒問題-特に麻痺性貝毒について-(道衛研)
  4. 生鮮貝の無毒化試験について(網走水試)
  5. ウ口処理について(網走水試紋別支場)
  6. 貝柱は無毒か(中央水試)