水産研究本部

試験研究は今 No.36「シシャモの人工孵化技術の開発」(1990年7月13日)

試験研究は今 No.36「シシャモの人工孵化技術の開発」(1990年7月13日)

シシャモ人工ふ化技術の開発

1.人工精漿の開発

  シシャモの人工ふ化事業は昭和6年頃から行われていますが、図のように、漁獲量の減少が続いており、ふ化放流成果が現れていないのが現状です。この理由としては、人工受精率が低いことや卵の取り扱いとふ化仔魚の飼育が困難なことがあげられます。このため、水産艀化場では昭和61年から人工増殖技術の開発に着手し、これらの問題解決に努めてきましたので、今回はその一端をご紹介します。
    • ホッキガイの沈着
  シシャモは11月頃大群をなして河川を遡上し、雌雄1尾づつ、つがいとなって産卵します。産卵放精の瞬間は、写真のように、雄が尻鰭で雌の産卵口を覆い、その狭い隙間で卵と精子を受精させます。これは雄の精液がわずかしか出ないことをカバーするために大変有効な方法と思われ、自然界での受精率はほとんど100%となっています。

  シシャモの抱卵数は1尾あたり8000~10000粒とサケ(2000~4000粒)に比べて多いのに対し、精液の量は極めて少なく、腹を絞ってもにじむ程度で、サケのように勢いよく出ません。しかも精子の活性時間は20~30秒の短時間で、その後は受精能力がなくなってしまいます。
    • 苫小牧沖におけるホッキガイの誕生から1歳になるまでの生活
精漿の成分
  人工受精では、この精液の少なさが問題点となり、様々な試みを行いました。その一つとして、精巣をすりつぶして精液の全体量を多くしましたが、受精率は20~90%と安定しませんでした。この原因としては、卵を受精させるのに精子の数は十分あるものの、それだげではまだ精液の量が不足しているためと考えられました。そこで、精液の全体量を多くするために何か(薄め液)を入れて卵の隅々にまで行き渡らせることに焦点を絞りました。

  しかし、薄め液を精液に入れることによって精子が活性化してしまうと、受精させるまでの操作が問に合わないので、精子の運動をコントロールできる性質の薄め液を探さなければなりませんでした。

  そこで、淡水や海水、生理食塩水などで試してみましたが、精子はすぐに動いてしまいました。唯一、精子を活性化させないで精液を薄めることができたのが精漿でした。精漿というのは精液を遠心分離するとできる上澄み液です。この成分を化学的に分析して人工的につくったのが人工精漿です。これを用いた希釈精液では表のように安定して高い受精率を得ることができ、シシャモの人工ふ化技術の基礎を固めることができたのです。
(水産孵化場)

トピックス

「第2回石狩地区水産試験研究プラザ」開かれる

  6月29日、石狩本町福祉センターにおいて石狩地区(石狩漁協)の水産試験研究プラザが開かれました。
 
  プラザでは、「ホッキガイの天然種苗と栽培漁業の見通しについて」「ヒラメ種苗放流事業について」の話題提供があり、活発な討議が行われました。

  その後、意見交換が行われ、サケ・マスの小型化、ワカサギの増殖、ヒラメの養殖、シャコの不漁原因、ツラウオの産卵時期の調査状況などについての質問や意見が交わされました。

  今回の参加者は総勢57名と石狩漁協地区のプラザとしては少数で行われたこともあり、ひざを交えた和やかな雰囲気の中で行われました。

  なお、今後、浜益(7月21日)、厚田(7月下旬)において試験研究プラザの開催を予定していますので多数の参加をお待ちしています。
(中央水試)