水産研究本部

試験研究は今 No.40「ケガニの資源管理について」(1990年8月10日)

試験研究は今 No.40「ケガニの資源管理について」(1990年8月10日)

ケガニの資源管理について

  ケガニは北海道の特産品であり、漁業ばかりではなく、多くの産業にとって重要な資源となっています。しかし、近年、資源が減少し、漁獲物が小型化したため、漁獲量制限を始めとする資源保護や資源管理対策が講じられていますが、資源の回復はみられていません。

  現在、種苗放流による積極的な資源増大策も考えられていますが、まだ試験段階ですので、ここでは当面する漁業を通じての資源管理について考えてみたいと思います。
    • ケガニかごの網目選択性試験結果と脱出口付きケガニかご
1:資源動向を知る
  これまでの資源状態を知り、将来の資源状態を予測することなくして資源管理はありえません。このためには、過去の漁業に関する正確な情報(漁獲量、操業隻数、漁獲物のサイズ等)と現在の資源状態の正確な把握が必要です。

  ところで、毎年のようにケガニの密漁事件がマスコミで取り上げられていますが、表に出る部分は少なく、氷山の一角とも言われています。正確な漁業情報の収集の上でも、密漁は大きな障害となっています。
2:管理方策を決める
  ケガニの生息場所や成長・成熟、寿命などの生物学的な特徴と、前述した資源動向を考慮して、漁獲の仕方を決めますが、この漁獲の仕方が具体的には資源の管理方策となり、将来の資源状態に影響を及ぼします。いつ、どこで、どのサイズのケガニを何トン漁獲するかということですが、このうち漁獲量(割当量)は毎年変化し、漁業者にとって最大の関心事となります。
 
  これと対をなして重要なのが漁獲サイズです。北海道では、資源保護のために雌ガニと甲長8センチメートル未満の雄ガニの採捕が禁止されていますが、網目制限が行われていないため、現在用いられているケガニかご(網目寸法3.5寸以下)では規格外のケガニも多量に漁獲されてしまいます。

  これらは選別して再び海中に戻されますが、この間にケガニの活力は低下し、資源に悪影響を与えます。このようなことを少しでも少なくするためには、適正な網目寸法にするなど漁具に工夫が必要です。ケガニかごの網目の寸法とケガニの甲長との関係を示したのが次の図ですが、網目の寸法が4寸のときに8センチメートル未満のケガニがあまりかからなくなることがわかります。このほか水試では脱出口を付けたケガニかごを使った試験を行っており、脱出口の寸法と取れるケガニの甲長との関係について調査しています。
3:経済的視点に立つ
  漁業は利益を上げることを目的にしていますから、経済的視点を無視した資源管理はありえません。また、これからの資源管理には漁家経営を含んだ漁業管理が必要となっています。

  これらの視点から、昭和59年から6年間、オホーツク海のケガニかご漁業による漁業管理モデルの開発を行いました。このモデルは、資源量や漁獲効率、漁業にかかる経費やケガニの単価などのデー.タをもとに、今後の漁獲量や資源量だけでなく、漁家経営の収支がどのように変動していくかを予測できるようになっています。
4:今後の体制づくり
  それでは、さまざまな管理方策があるのに、ケガニの資源が回復しないのはなぜでしょうか。

  確かに方策のまずさも見逃せませんが、それにはもう一つ大きな原因が考えられます。それは管理方策を作る者(水試、行政)と、それを実施する者(漁業者)とが分かれてしまっていることです。漁業者が方策の作成において脇役のままなのです。これでは自らケガニ資源を管理しようという「意識」は高まりません。今年から始まった資源培養管理対策推進事業では漁業者が中心となる新たな体制づくりが検討されています。漁業者が管理の主役となり、管理する意識が高まったとき、ケガニの資源管理は大きく前進するものと期待されます。
(網走水試)

平成2年度浜益、厚田地区水産試験研究プラザ開かれる。

  浜益地区と厚田地区のプラザがそれぞれ7月21日に浜益中央公民館で、7月30日に厚田漁協会議室で開催されました。プラザでは、水試から磯焼げ対策やヒラメ種苗放流事業の話題、孵化場からはサケの小型化についての説明があり、膝を交えた中で、ざっくばらんな意見交換や活発な質疑等が行われました。水試では、これからも浜の期待に応えるよう努力していきますので、ご協力よろしくお願いします。
(中央水試)