水産研究本部

試験研究は今 No.648「競争型・応募型研究事業に、えびかご漁業用蝟集餌料開発研究が採択されました」(2009年9月16日)

競争型・応募型研究事業に、えびかご漁業用蝟集餌料開発研究が採択されました。

  「えびかご漁業」は北海道において重要な漁業のひとつですが、餌としてスケトウダラ等の天然餌料を用いており、近年のこれらの魚価上昇が漁業経営を圧迫しています。これに加えて、天然餌料は、通称「シオムシ」と呼ばれる全長1センチメートル程度のヨコエビ類によって横取りされるため、餌としての機能が弱まり、漁獲効率の低下を招いています。このため、平成18年度から20年度の3年間において、釧路水産試験場が中心となり、工業試験場、稚内水産試験場が参画して生餌と同等以上の漁獲効果のある「えびかご漁業用人工蝟集餌料」の開発に取り組んできました(重点領域特別研究)。この研究では、余市郡漁業協同組合を中心とする、えびかご漁業当業船の協力もあり、上述の効果が見込める人工蝟集餌料を試作することができました。そこで、この研究で得られた成果を漁業生産現場に技術移転させるために実用レベルでの人工蝟集餌料の製造と評価を行う外部資金活用研究事業に応募しました。

  応募した事業は、農林水産省農林水産技術会議事務局が所管する「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」の現場提案型研究というものです。この事業では、漁業協同組合も研究機関として正式に参画することが可能であり、まさに「現場提案型研究」の理想型ではないかと考えました。

  応募に関しては、事務書類や綿密な研究計画と予算、備品類の調整など膨大な事務量を短期間でこなさなければならず、大変苦労しました。今年度の応募課題数は全体で345課題ありました。

  採択課題の発表はホームページ上で行われることになっていましたが、具体的な日時は通知されませんでしたので、ヒアリング以降は期待と不安の日々を過ごしていました。ホームページ上で、無事、採択さていることを確認できたときは、今までの心労が一瞬にして消え去りました。なお、現場提案型研究課題の採択数は40課題でした。

  採択された課題の名称は、「漁家経営安定を推進するえびかご漁業用ロングライフ蝟集餌料製造システムの開発」で、今年度より平成23年度までの3カ年の研究事業です。研究参画機関は釧路水産試験場を中核とし、工業試験場、中央水産試験場、余市郡漁業協同組合です。

  この研究事業では、未低利用水産資源を活用し、天然餌料と同等の蝟集効果を発揮する、安価で耐久性や持続性に優れた人工蝟集餌料の開発を行います。さらに、実用レベルでの安定供給が可能な大量生産システムの開発を行うことにより、北海道のえびかご漁業の効率的な漁業生産を推進し、安定した漁家経営の支援を目指します。

  今後の成果にご期待ください。

(釧路水産試験場 利用部 北川 雅彦)
    • 図1
      図1調査船によるえびかご漁業用人工蝟集餌料試験調査
(1)稚内水試試験調査船「北洋丸」(237トン)
(2)調査で使用した「えびかご」
(3)えび類等の選別及び標本のチェック
(4)採取したホッコクアカエビ(アマエビ)

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