農業研究本部

北海道で発生したFusarium属菌の花き病害(第1報)-トルコギキョウ茎腐病-

堀田 治邦,児玉 不二雄

道総研農試集報.100,15-21 (2016)

北海道におけるトルコギキョウの栽培ハウスで茎が激しく腐敗する症状が認められた。病徴は茎が淡褐色に腐敗して萎凋し,やがて枯死した。茎の病斑部には白色の菌糸と淡オレンジ色のスポロドキアが形成された。病斑部からFusarium属菌が分離され,カーネーション葉片寒天培地上で淡オレンジ色のスポロドキアが形成された。分離菌の大型分生子は細長く細胞壁は薄かった。その基部細胞はV字あるいは足形であった。厚膜胞子の形成は認められなかった。PDA培地を用いて分離菌を25℃で培養したところ,対照菌株のF. avenaceum T-16と同程度に生育は遅かった。F. avenaceumの種特異的プライマーでトルコギキョウ分離株のDNAを増幅させたところ,特異バンドが検出された。分離菌の大型分生子懸濁液をトルコギキョウ(品種:「あずまの波」)に噴霧接種したところ,すべての菌株で原病徴と同様の症状が認められ,Fusarium属菌が再分離された。以上の結果から,トルコギキョウの茎腐病を起こす病原菌はF. avenaceumと同定された。


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