農業研究本部

田縁 勝洋 他:ヤマノイモ新品種「きたねばり」の育成

ヤマノイモ新品種「きたねばり」の育成

田縁 勝洋,鳥越 昌隆,田中 静幸,高宮 泰宏,入谷 正樹,黒崎 友紀,柴田 浩之,前塚 研二,三口 雅人,岡崎 智哉,澤崎 明弘,高山 直保,渡邊 隆志,宮村 透,赤間 智吏,茂古 沼真二

道総研農試集報.98,15-24 (2014)

 ヤマノイモ(Dioscorea polystachya Turcz.)新品種「きたねばり(品種登録出願公表中,旧系統「十勝3号」)は,北海道立(現北海道立総合研究機構)十勝農業試験場,十勝農業協同組合連合会,帯広市川西農業協同組合および音更町農業協同組合の共同研究により,とろろの高粘度,ヤマノイモえそモザイク病(CYNMV)抵抗性および短根を目指して育成された。既存ナガイモ系統である「音更選抜」に比べ,いもの乾物率およびとろろの粘度が高く,CYNMV抵抗性が強く,いもの全長が短い。「きたねばり」は,高乾物率でCYNMV抵抗性を有するイチョウイモ系統「No.11」と,北海道の気象条件に適したナガイモ「音更選抜系統」を2000年に交配し,その後代から選抜された。早晩性および標準的な栽植密度での収量は「音更選抜」と同等である。また,いもの乾物率が約5%高いことからすりおろしたとろろの粘りが強く,食味評価が良好であり,加工適性に優れる。さらにCYNMV抵抗性が強いため,採種圃場におけるウイルス罹病株の抜き取り作業が軽減され,生産コストの低減が可能である。これらの特性から,「きたねばり」は2011年に北海道の優良品種に認定された。特にその優れた品質特性により,従来のナガイモとは異なる新たなブランド品目として期待される。


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