農業研究本部

日本産コムギ眼紋病菌の性状

竹内 徹

道総研農試集報.104,59-65 (2020)

 北海道から分離されたコムギ眼紋病菌は,PDA平板上の培養形態から生育が速く菌叢の先端が全縁平滑の菌群(fast-growing, even-edged type:FE型),生育が遅く菌叢の先端が不定形羽毛状の菌群(slow-growing, feathery-edged type:SF型)の2菌群が存在する。日本産のSF型菌の形態は未調査であるため,1989 年に道内8支庁管内20市町村から40菌株を採取し形態を調査した。40菌株のうち20菌株がSF型菌,20菌株がFE型菌であった。SF型菌の分生子は長さ41.2-118.3(平均70.1)×幅1.0-2.1(平均1.6)μm,3-7個の隔壁を有し,既報の海外産SF型菌の形態と概ね一致した。また,日本産のFE型菌と日本産のSF型菌は分生子の形態が類似し,その形態に基づく識別は困難であった。分離菌のコムギおよびライムギに対する病原性を調査した結果,FE型菌,SF型菌ともにコムギに対しては強い病原性を示したが,ライムギに対してはSF型菌の病原性が強い傾向は認められたものの,ライムギに対する病原性に基づいて2菌群を識別するのは困難であった。


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