農業研究本部

育苗箱施肥を利用した水稲の減化学肥料栽培

笛木 伸彦、今野 一男、田中 英彦

北海道立農試集報.79,51-58 (2000)

 水稲の減化学肥料栽培の確立を目的とし、被覆尿素肥料を用いた育苗箱施肥の問題点とその改善方法を検討した。苗箱施用に最適な被覆尿素肥料は、苗の生育に障害を与えなかったことと、本田移植後の窒素溶出が早かったことから、LPS60(水温25。C条件下で30日間の窒素溶出量が極小で、その後30日間で80%が溶出するよう製造された)であった。LPS60による全量育苗箱施肥区の成熟期窒素吸収量は、窒素減肥条件でも全層施肥区とほぼ同程度であったが、生育初期~中期の窒素吸収量は劣る傾向にあった。一方、育苗箱施肥と側条施肥を組み合わせた区(以下、箱+側条施肥と略記)では、幼穂形成期~出穂期までの窒素吸収量が窒素減肥条件でも全層施肥区と同程度以上であった。箱+側条施肥区の窒素減肥率と収量指数の間には、1%水準で有意な負の相関があり、収量指数が100となる窒素減肥率は23%と推定され、また約20%の窒素減肥率では、白米中蛋白含有率は全層施肥区のそれを下回る傾向が認められた。  以上のことから、北海道のような寒地において育苗箱施肥を導入する場合、生育初期の窒素不足を補うために側条施肥と組み合わせることが合理的であり、この組み合わせによる窒素減肥率は20%程度が適切であった。


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