農業研究本部

果樹の凍霜害防止に関する試験
第3報 MH-30がブドーの形質に及ぼす影響について

赤羽 紀雄、山崎 健、伏見 宏平

北海道立農試集報.1,1-9 (1957)

1.ブドーの生育中にMH-30を葉面撒布して外部および内部の形質におよぼす影響を検討した。
2.果粒の肥大におよぼす影響はMHの濃度が低いとき(0.01~0.03%)はかえって肥大を促進するが濃度の高い場合(0.05%以上)は抑制する。しかし撒布時期がかなり響影するようで一応収穫期1カ月前の新梢伸長の緩慢期が撒布適期と考えられる。
3.果粒の着色におよぼす影響は0.05%の濃度ではデラウエアでは着色の促進を認めた。すなわち着色の初期において対照区より1週間程度促進されたが収穫期に近づくにつれて、その開きは接近し最後において結局3日程度の促進を認めた。カメルス、ナイヤガラでは促進効果は認められなかった。0.1%の濃度では0.05%のそれとの間に促進効果に差がないばかりでなく1955年には葉に著しい薬害を認めた。
4.新梢の伸長仰制および枝が褐色に変る(コルク化)影響については顕著な効果を認め、とくに副梢の小さなものは途中で枯死した。撒布濃度による差は認められないが、MH処理区は対照区にくらべ半褐色の部分が少なく褐色部と緑色部が接近して明瞭な区別があった。
5.MHは形成層活動を秋期早く緩慢にし、その結果、停止期を1週間程度早めた。勿論これには撤布の時期が影響するが、果粒肥大完了期の8月中下旬に撒布すれば形成層活動が緩慢になるとともに約10日間位は同一状態を続けて、この間にコルク層が急激に発現増大する。
6.果実収穫直後に新梢内の成分はMH処理区は対照区にくらべ可溶性糖が増加している。かつ枝の先端部が基部より含有量が多い。全窒素、粗灰分については差を認めない。
7.MHが新梢の耐凍性におよぼす影響については顕著な効果を認めた。とくに秋においてはMH0.05%および0.1%処理区は対照にくらべ、デラウエア、カメルス、ナイヤガラ各品種ともに5℃程度の耐凍性が増強された。
8.MHが新梢の耐凍性獲得におよぼす影響を時期的に見ると10月上中旬までは処理区は顕著な効果があり凍死の進行も対照区より遅い。10月下旬以降になると非常に処理区と対照区の耐凍性は相接近してくるが低温処理後の細胞の生存持続はやはり処理区の方がやや大きい。


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