農業研究本部

大豆の発芽について
第1報 熟度と発芽について

犬塚 正、小玉 資雄

北海道立農試集報.1,10-17 (1957)

1.1953~1955年に大豆十勝長葉及び丸小粒を用い子実の熟度と発芽の関係、後熟の効果、子実の発育経過並びに熟度を異にした種子の低温処理が発芽におよぼす影響等を調査した。
2.熟度と発芽の関係は年次により、また品種によっても多少異なるが、開花後30日で20%以上の発芽を示し、以後急激に上昇して50日目頃に至るとほぼ完全な発芽を示すに至り、熟度の進むにつれて平均発芽日数も短くなった。
3.後熟の発芽におよぼす影響を見ると未熟なものは高温で急激に乾燥させると著しく発芽を害したが、草本のままでかげ乾すると発芽は増進され、その増進の程度は未熟な場合ほど著しかった。なおいずれの場合でも後熟すると発芽日数の短縮が目立った。
4.熟度と子実の発育経過を見れば生粒の長さ、巾は熟度のすすむにつれて増大し、開花後50日頃に厚さはそれより10日位遅れていずれも最大となり以後粒水分含量の減少にともない縮小した。従って生粒重量は開花後60日目に最大値と示した。子実の水分含量は漸減したが、開花後50日目から60日目に至る間はやや緩慢であった。風乾粒の長さ、巾、厚さ及び重量は、登熟のすすむにつれて漸増した。
5.登熟中の低温処理の結果では、自然状態における初霜程度の低温では、開花後50日以上経過していれば、発芽低下は著しくなかった。処理後草本のままで風乾すると、後熟の効果も加わるためか処理直後に比べ発芽は優る傾向が見られた。よって通常の初霜程度の条件であるならば、開花後 55日以上の熟度に達していれば、霜害の発芽におよぼす影響は極めて少ないものと解される。
6.熟度を開花後の日数で区分するのは、かなり不正確であるが、大豆の熟度を禾穀類等に見られるように次の分類を試みた。すれわち1.緑熟期、2.晩緑熟期、3.早黄熟期、4.晩黄熟期、5.完熟期とした。
7.上述の熟期による晩黄熟期は、発芽能力も完成され、子実の形状、重量も最大を示し肥大の頂点とも言うべく、また初霜程度の低温処理による発芽能力を低下しない限界熟度でもあり、大豆子実の登熟上重要な意義を持つ時期であると言えよう。


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