農業研究本部

果樹凍霜害防止に関する試験
第4報 ブドー樹の凍害とその組織学的観察

赤羽 紀男

北海道立農試集報.2,107-115 (1958)

 ブドー枝条を組織学的に観察して生成過程を調べ、さらに凍害を受けた場合について凍死の原因を確かめた。なお耐凍性と組織上との関係および自然圃場における耐凍性の判定法について1~2の例を指摘した。細部について要約すれば次のとおりである。 

1.ブドー組織の生成には一定の過程があり新梢の伸長と関係がある。つまり組織の完成されたときがコルク層の発現するときで、この時期より新梢伸長が緩慢になるのが常態である。耐凍性の弱い品種(醸造専用種一般)は強い品種(アメリカ系)にくらべ内鞘部の組織生成過程に著しい差がある。新梢伸長は8月中下旬に全生有期間における全伸長量の約40~50%以上の場合は最も耐凍性が強くなるが8月中下旬以降特に9月以後の伸長量が多い場合は耐凍性が弱くなる。
2.形成層活動は形成層細胞の数と配列とに間係があり、活動停止期では2~3層の細胞が規則正しく配列される。
3.コルク層の有無によって耐凍性に著しい差がある。すなわちコルク層のある場合は、ない場合にくらべ約3倍の耐凍性を獲得する。
4.9月下旬~10月下旬までは0℃で7日間のhardeningで耐凍性が増強するが、それ以外の時期では0℃のhardeningは効果を認めない。
5.靱皮部、特に靱皮射出髄の先端部およびコルク形成層直下の柔組織が耐凍性が最も弱い。これはほかの組織より脱水抵抗が特に弱いためであろう。なお木質部は靱皮部にくらべて著しく耐凍性が強い。
6.ブドーの凍害常に枝の外側(靱皮部)より内側(木質、髄部)に向かって進むが単なる枝の枯込みは内側より外側に向かって移行する。
7.自然圃場において、もし枝条が凍害を受けた場合は細胞外凍結による凍死であって細胞内凍結による凍死でないことを人工処理によって証明ができた。


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