農業研究本部

根釧火山灰地において深耕を行う場合の燐酸施肥法と燐酸固定について
特に32Pを用いての検討

早川 康夫

北海道立農試集報.2,15-22 (1958)

 根釧パイロットファームにおいては大型機械力を用い深耕を伴う開墾が行われ、礬土性の高い埋没火山灰層をも耕土として利用することとなった。このような場合の燐酸質肥料の効果と燐酸固定について特に32Pを用い検討を加えた。  すなわち、作業行程の都合上改良資材の燐酸肥料は前年夏から秋にかけ耕起と同時に撒布混和されしたがって越冬後約半歳を経て翌春になり播種が行われることが多い。  このような場合、過燐酸石灰はその大部分が固定され作物に利用され難い形になってしまうが熔成燐肥ではこの影響は軽微である。このような燐酸固定は摩周d層(埋没層)の礬土性が高いことによるものであり、その固定は極めて迅速で、摩周a層(最上層として分布する火山灰層)よりもはなはだしく難溶性の形をとる。しかしこのような固定燐酸は土壌の還元化により再び利用されやすい形に戻る可能性のあるものと推定されるので、牧草のような長期作物においては過燐酸石灰を用いその一部が固定し一時は難溶性となっても必ずしも損失とは考えられないが、このような水溶性燐酸を主成分とする肥料は播種直前に施用すべきである。また牧草の燐酸追肥に際しては地表浅く固定され根まで到達しない場合も考えられるので、燐酸は基肥として一度に施しておくのも効果的と推定される。


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