農業研究本部

十勝地方における農作物害虫の発生予察に関する調査
ヨトウガの発生及び被害と気象との関係

井上 寿、春木 保

北海道立農試集報.2,65-70 (1958)

1.北海道立農業試験場十勝支場(帯広市)における昭和3年から同18年および同28年から31年までの21箇年間の糖蜜誘殺資料、昭和5年から同18年および30、31年の16箇年間の産卵調査および大正14年から昭和31年までの32箇年の被害調査資料を基礎として、発生時期および被害に関係する要因を検討した。
2.第1化期成虫の発蛾は6月3半旬に始まり同月5半旬を最盛期として7月3半旬におわり、第2化期は8月4半旬に始まり、同月6半旬と最盛期として9月4半旬におわる。当地方では年に2回の発生を示す。
3.第1化期の産卵時期は6月5半旬に始まり同月6半旬を最盛期として7月3半旬におわり、第2化期のそれは8月4半旬に始まり、同月6半旬を最盛期として9月3半旬におわっている。
4.第1化期の発峨最盛期の早晩と気象との関係で相関を示したのは発蛾直前である6月中旬の平均気温のみで、日照時間や降水量の多少とは関係がなかった。第2化期では7月の平均気温、特に7月下旬を中心としてその前後の高温が発蛾最盛期を早めた。
5.第1化期の多被害年と少被害年とを比較すると、統計的には有意差を認めることができなかったが、幼虫の発育時期である7月中、下旬が高温であることが被害を多くするようである。
6.第2化期の被害では、第1化期幼虫の発育時期である7月中旬を中心としたその前後の気温が高く、日照の多い場合並びに第2化期成虫の出現始めから最盛期にあたる8月中旬を中心とした時期が高温、寡雨、多照の天候の場合に被害を高らめられる傾向があった。


全文(PDF)