農業研究本部

根釧地方におけるルタバガ白腐病に関する試験
第2報 本病の発生誘因について

馬場 徹代

北海道立農試集報.3,1-24 (1958)

1.根釧地方におけるルタバガ白腐病の発生の多寡と栽培期間(7、8及び9月)の主な気象因子との関係を、昭和12年より31年までの17年間の記録によって調査した結果、一般に高温多照の年に発生の多い傾向があった。
2.ルタバガの生育状態からみると、生育が進む時期特に根部の肥大生長期に本病の発生が多くなることが認められた。
3.しかし、本病病原細菌をルタバガの各生育時期の根部に接種した結果によると生育前期の根部組織は腐敗し易く、生長肥大するに伴なって腐敗し難くなる傾向がみられた。
4.本病は、ルタバガの根部に生じた各種の傷痍部から感染がおこることが知られた。
5.本病病原細菌はルタバガ根部の無傷部位からは侵入しえず、人為的切傷部位に接種すると切傷直後にはよく侵入するが、癒傷組織が発達してくると侵入が阻止されることが観察された。
6.栽培中にルタバガの根部に形成される傷痍の種類と発病との関係を検討したところ、根部の裂傷とダイコンバエ幼虫の食痕が本病発生に著しく影響していることが認められ、根部の裂傷からの発病は9月上旬以前に、また、ダイコンバエ幼虫の食痕よりの発病は9月上旬以後に多い傾向があり、この他、根腐病(仮称)病痕も発病誘因となることが確かめられた。
7.根部の裂傷は根部の肥大増殖度の高い時期に生じ易いことが認められた。
8.ルタバガ根部の肥大形指数と根部裂傷度との間には正の相関関係があり、扁球形の形状のものが裂傷度も高いことが認められた。
9.ルタバガ3品種(グリーントップ、ネムロルタバガ及びマゼスチック)の白腐病に対する罹病性の差異は、夫々の根部組織の腐敗性の難易によるものではなく、根部の肥大形状の差異によって生ずる根部裂傷度の差異に影響されていることが認められた。例えば、グリーンリップは扁球形で裂傷度及び発病率は高く、ネムロルタバガは球形で裂傷度及び発病率はともに低い。
10.以上の発病誘因を総括すると、根釧地方においては特に旱魃できないかぎり本病は一般に高温多照の年に多く発生し、根部の肥大生長に伴ない、根部の肥大形状に関係して生ずる根部の裂傷と気温の上昇とが相俟って本病を誘因し、この他ダイコンバエ幼虫食痕からも9月以降感染することがあるということができる。


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