農業研究本部

馬鈴薯紛状瘡痂病に関する研究 第1報

成田 武四、宇井 格生

北海道立農試集報.3,25-45 (1958)

1.馬鈴薯粉状瘡痂病は1954年北海道において初めて発見されたが、調査の結果本病は北海道のみでなく府県にも広く分布しその起源もかなり古いものとみられた。
2.北海道において本病の発生が確認されたのは渡島支庁管内7(9)市町村、石狩支庁管内1町村であり、その発生の特に著しいのは亀田町、上磯町などである。しかし、本病擬似症状のものがこのほか6支庁管内10(9)町村に発見せられ、本病の発生は広範囲に及ぶものと推定される。
3.亀田町の圃場において本病の発生経過を調査したが、馬鈴薯根部におけるゴール生成経過、塊茎における病斑の生成経過および程度は年によって著しく異なり、根部にゴールが多数生成せられても塊茎の発病が少ない年や、根部にゴールの形成は少なかったが塊茎の発病のはなはだしい年もあった。これは気象条件、その経過の差異に原因するものとみられた。
4.本病の発生経過および程度の圃場観察の結果からみると、病原菌の寄主体侵入は13~20℃、特に17~19℃のときに旺盛で、20℃以上では抑制されるようにみられた。  また、ある期間乾燥後に降雨があり、しかも適温のときに菌の活動が旺盛で、発病が著しくなるようにみられた。
5.本病の発生の著しいところは腐植質に富むろ土地帯で特に低湿のところである。
6.馬鈴薯の品種によって発病に差異を示すものがあり、「神谷薯」、「プロフェツサーボルトマン」などは発病が少なく、「オオジロ」、「男爵薯」、「ケネベツク」などは多い傾向を示した。
7.馬鈴薯のほか、トマト、ナス、イヌホオズキおよびSolanum villosum WILLDは本病に罹病し、病変部に病原菌の胞子球が認められた。  ナスおよびS.villosum WILLDは従来末報告の寄主植物である。なお、トウガラシ、シシトウガラシ、クロミノイヌホオズキ、シユクコンタバコ、S.nodiflorum(その他馬鈴薯の野生種数種)なども病変をおこしたが、病原菌のp1asmodium時代のみが認められ、胞子球の存在は認められなかった(または不明)。これに関しては今後さらに検討を要する。
8.本病の発生が渡島支庁管内、特に亀田町、上磯町の局部に多い理由は馬鈴著の作付けが多いという栽培条件、腐植質に富む低湿のろ土であるという土壌条件、塊茎の発病危険期が同地方においては6月末~7月末にあたっているため、ほかの地方よりも菌の活動に好適する気象条件に遭遇しやすいという各種の好条件がそなわっているためとみられた。


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