農業研究本部

上川地方における田畑輪換経営について
東旭川経営試験農場の場合

千葉 誠

北海道立農試集報.3,53-62 (1958)

 東旭川経営試験農場は田畑輪換の前提となる排水施設は31年で一応完了、また酪農に必要な諸施設も32年度でほぼ整備し、本年以降本格的な輪換経営を実施できる段になった。今日までの経過をみると還元田の増収、肥料費の減少、堆厩肥の増産、労階働の低減、配分の合理化、労働強度の緩和、食生活の改善等従来の試験調査の結果と同様な傾向を示している。  しかし経済成果の上からみると水稲単作経営に比し農業所得乃至労働報酬総額においては若干上廻るが、凶作年を除けば単位時間当労働報酬、資本利廻は低く、輪換畑を含めた酪農部門の経済効率がいまだ低位にあることを示している。  当地域水稲単作経営にあっては堆厩肥の反当施用量は 200貫前後、増収は専ら金肥の増投に依存するため、同じような規模農家を対照すると肥料費支出は遥かに多く反当購入肥料費は当農場連作水田にくらべると6~7割も多い。  従来の論述は各年度における連作水田を対象としたが、連作田そのものが変貌しつつあり、またするであろうことは客易に想像されるところであり、田畑輪換が水稲単作経営の硬直性打破の機能をもつことは否定できぬと思われるが、当農場は還元年次に照応する肥料設計、輪換畑の作付方式、乳牛の飼養管理等に検討を要するものあり排水施設にもなお改善の余地が認められる。今後の推移に期待したい。


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