農業研究本部

畑作に対する鉱滓の効果について

南 松雄

北海道立農試集報.4,45-53 (1959)

 昭和30年度より3カ年にわたり、石灰肥料としての鉱滓の利用に関して各種鉱滓の酸度矯正力とその肥効を確かめるために炭酸石灰との比較試験を実施して次のような結果をえた。

1.畑作物の生育および収量に対しては平炉滓区≧炭酸石灰区>フエロマンガン滓区>高炉滓区>無処理区の順に明瞭なる施用効果の差異が認められ、一般に酸度矯正力の強い鉱滓ほどその肥効が高い傾向がある。
2.効滓の酸度矯正力は概して炭酸石灰よりやや劣る傾向がある。しかし、効滓の中で特に平滓の酸度矯正力は炭酸石灰とほば同程度であり、緩慢ながら相当の酸度中和力を示す。また、作物および土壌中の苦土含量が高くなる点より考えて効滓の効果は単に石灰による土壌酸度矯正力のほかに効滓中の含有副成分特に苦土の効果がかなり附加されているように考えられる。
3.一般に効滓施用区は炭酸石灰区より珪酸の吸収量がかなり高く、特に平炉滓区は珪酸のほかに燐酸、苦土の吸収量も高い。
4.各種鉱滓の肥効の差異は効滓中の石灰含量およびアルカリ度の多少に関係なく、それよりもむしろ石灰、珪酸、礬土との結合形態の差異が大いに関係しているものと考えられ、石灰と珪酸との分子比が高い鉱滓ほどその肥効が高い傾向が認められた。また鉱滓中の礬土含量の高いものほど作物の燐酸吸収量が低いようであるが、この点についてはなお充分に検討する必要がある。
5.同じ平炉滓でも急冷滓の方が徐冷滓より酸度矯正力がやや優るようであるが大差はないものと思われる。


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