農業研究本部

乳牛における青草,乾草,濃厚飼料による産乳上の効果 乳牛の放牧時における青草、乾草、濃厚飼料などの補給による産乳上の効果について

坪松 戒三、藤田 保、斎藤 久幸

北海道立農試集報.10,1-14 (1963)

 根釧地方に奨励されているLadino clover、イネ科混播草地放牧の場合、種々の補 助飼料の給与によって産乳効果、経済効果をあげうるかどうかを調査するため青草、 乾草、濃厚飼料などを乳牛に給与して栄養摂取量、産乳量、産乳経済性を調査した。  また綿羊による消化率、灰分出納などから乳牛の飼料消化状況を推測し、さらに濃 厚飼料の蛋白濃度の比較試験を行ない、放牧時の補助飼料の給与方法についても検討 したものである。  放牧時青草を夜間投与して飽食させると、日量76kg程度採食するが、乾草を夜間 自由採食させると4~5kg採食し、放牧草の採食量は低下した。燕麦を自由採食させ ると10kg近くも採食した。  産乳量は15.1~20kgの乳牛を供試した場合、適量の濃厚飼料(1.4~2.5kg) と乾草(2.6~4kg)を給与したときより青草、乾草給与群はいずれも低下したが、燕 麦給与群は増量した。飼料の経済性からみると青草、乾草、燕麦などを飽食させるよ りも適度の濃厚飼料と乾草を給与した方が有利であった。  このことを綿羊の消化試験から考えてみると、イネ科乾草の添加は蛋白質、粗繊維 の消化を低下させるが、燕麦、麩などは放牧草の粗繊維の消化率を向上させた。また 放牧草のみではP不足が顕著で、これは乾草、青草の添加では改善されず、濃厚飼料 によることが有効で、放牧時のCa添加は不必要であることが認められた。  さらに濃厚飼料の蛋白質の濃度(DCP)14%と28%との間には差異が認められ なかった。  以上のことから放牧期の補助飼料としては乾草1~2kgと濃厚飼料を乳量に応じて (乳量の1/10~1/5)給与することが産乳経済上有利であることが認められた。


全文(PDF)