農業研究本部

大豆の栽培条件に対する反応の品種間差異
第1報 栽植密度と施肥量の組合わせに対する反応

藤盛 郁夫

北海道立農試集報.10,31-41 (1963)

 1959年から1961年にかけて、大豆の栽植密度と施肥量に対する反応を調査し、処理 および品種間差を究明した。 

1.発芽率は施肥量の増加によって減少したが、栽植密度および品種間に差は認めら れなかった。
2.草丈の伸長率は密植によるよりも、多肥による仲長率が顕著であり、多肥・密植 区で最大の伸長率を示した。品種間では「北見白」「カリカチ」および「大谷地 2号」のそれは大きく、「十勝長葉」では小さかった。
3.分枝数は密植による減少率が大きく、標準区に対して70%強であった。品種別 では、「十勝長葉」の減少率が92%で最高を示し、「カリカチ」(60%)、 「大谷地2号」(63%)は低かった。
4.主茎節数は密植することによって減少し、増肥によって増加した。増減率は「十 勝長葉」は小さかったが、「カリカチ」および「大谷地2号」は大きかった。
5.茎の太さは密植によって減少し、増施肥によって増大した。
6.1株稔実莢数の密植による減少率(39%)と多肥による増加率(37%)はほぼ等 しく、最大の着莢区は多肥・中植区で、標準区に対して19%の増加、最少は無肥・密植区で48%の減少であった。栽植密度による減少率の品種間差は小さか ったが、施肥による増加率は「鈴成」のみがほかの4品種にくらべて劣った。主 茎莢歩合は密植によって急激に増大した。品種間では全処理平均で「十勝長葉」 が86%で最も高く、「鈴成」も80%を示し、最低は「大谷地2号」の67%で あった。
7.10a当たり子実収量の年次による変動は大きかったが、密植および多肥の両処 理とも増収し、多肥・密植区において最大の生産力を示した。密植峰よる増収率 は「鈴成」「十勝長葉」で高く、多肥による増収率は「十勝長葉」「大谷地2号」 および「カリカチ」で高かった。したがって、多肥・密植区における最大の増収 率は「十勝長葉」のそれであった。
8.以上のように、年次または品種によって、栽植密度および施肥量に対する反応の 程度は異なり、常に多肥・密植で効果が高いと断定できない。 本調査の結果では、主茎莢歩合の高い長葉型の品種、「鈴成」「十勝長葉」にお いて密植の効果は高く、また、施肥量の増加に伴なって総重の増加率の高くなる 品種ほど、肥料の効果が高く、その効果は「十勝長葉」が最も大きく、「カリカ チ」「大谷地2号」がそれについだ。


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