農業研究本部

根釧地方火山灰土壌中における燐酸の行動について
第1報 易分解性有機燐について

早川 康夫

北海道立農試集報.5,17-23 (1960)

 根釧地方火山灰地においては、N/5HCl浸出法などの稀酸で処理する方法が実際に 圃場で行なう作物栽培試験の燐酸肥沃度と合致せぬ場合が多い。この原因の1つが有 機燐にあるのではないかとの予想のもとに土壌に燐酸肥料を施したときにこれが有機 燐となりうるかについて2、3の予備的試験を行なった。その結果 

1.水溶性無機態燐酸肥料を施用した跡地土壌では易分解性有機燐量が増加しており 実際作物を用いて行なった残効試験に良く合致する結果がえられた。
2.土壌中の有機燐はNucleic acid、Phytin系統のものとされており、またこのも のは相当よく作物に利用されるが無機態燐酸と同様に火山灰土壌中で固定された。
3.このような固定を防ぐために32Pでlabelした過燐酸石灰を堆肥に混合施用したところ供試作物の増収をもたらしたのみでなく、跡地土壌における易分解性有機燐含量の増加が認められた。

  以上のように有機燐が根釧火山灰土壌の燐酸肥沃度に大きな影響を与える可能性の高いことが認められた。しかしこのような土壌中の有機燐が実際にどの程度利用されたかについての検討は未だ不十分であった。


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