農業研究本部

大豆「奥原1号」の表現型変異と環境条件

後藤 寛治

北海道立農試集報.8,107-114 (1961)

 「奥原1号」の採種圃にみられる長稈異型につて、その実態を調査し、発生機構を追究した。 

1.従来長稈異型とよばれてきた個体は、実際には、正常な生育に由来するもので地 温が十分高くなって播種すると大部分の個体が長稈型を呈する。長稈型が、従来 の標準播(5月20日ころ)または早播区で特に目立つのはそれらの区で、節数が正常個体の6割程度にとどまる矮性個体が、70~80%発生することによる。
2.1959、1960年の系統比較試験の結果、「奥原1号」は、品種集団として、茎長、 子実収量について、遺伝的な変異を含むものと推定された。
3.集団の中には、標準播区で晩播区同様、正常に伸長する系統も含まれており、同 一系統の中で、長稈個体を選抜すると、次代に選抜効果があらわれるものもあっ た。このような結果に基づき、「奥原1号」自体が、矮性個体の発生率が異なる 系統を含んでいるものと推論した。
4.標準区より2週間晩播すると、節数が増加し茎長は平均10㎝以上高くなり、子 実収量も高まることが明らかになった。
5.いわゆる異型の発生と芯止り現象、播種期の温度条件との関係を調べ、他作物で 知られている異型との異同を論じ、さらに、生理反応に関する集団の多様性につ いて、2、3の考察を加えた。


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