農業研究本部

根釧地方泥炭の理化学的特徴と開発に伴う土壌肥料学的諸問題について
第3報 泥炭層中に挾在する火山灰の灰白化現象

早川 康夫、奥村 純一

北海道立農試集報.9,49-61 (1962)

 釧路泥炭層中に挾在する摩周統および雌阿寒統火山灰は、いずれも泥炭という腐植 層に黒染されずに灰白色をていしている現象について、同様に樽前統火山灰層を挾有 する篠津泥炭および火山灰の影響がないサロベツ泥炭もあわせ供試し、浜頓別および 樺岡のpodzol土壌と比較検討した。実験結果を要約すると次のとおりである。 

1.釧路および篠津泥炭は上層より泥炭一火山灰(灰白色)一泥炭と埋積し、かつ火山 灰はR2O3、β-fraction、塩基類などを失なっており、その直下の泥炭は集積 層としての性質を具備していた。すなわち供試泥炭は、その作用力に強弱はあろ うがpodzol的な溶脱作用をうけていることがわかった。
2.podzol土壌と比較したところ、泥炭層中の挾在火山灰はpodzol土壌のA2層に相 当するもので、R2O3が溶脱をうけて失なわれ、この結果、腐植が鉄・礬土と 複合体を形成しえないために、火山灰層は灰白色をていしていると考えられた。
3.サロベツ泥炭でも第2層に火山灰層が存在すれば灰白化現象をおこさせる環境に あろうと推論した。
4.釧路泥炭の挾在火山灰層がR2O3を失なう機構について調査したところ、Morhumus に由来する有機酸のほかに硫酸も関与し、これらの復合作用の形がR2O3溶脱 の一原因を担っているようであった。
5.付随する問題として、挾在火山灰層にはHcl可溶性P2O5がすこぶる多かった。これ はP2O5が溶脱され難かったことのほかに、R2O3が失なわれたためにR2O3との結合の弛くなったP2O5が増加したことによる。


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