農業研究本部

寒地稲の子実生産の解析的研究
1.栽植密度が生育相と受光態勢に及ばす影響

竹川 昌和、砂田 喜与志

北海道立農試集報.30,16-24 (1974)

 北海道における近年の水稲品種の生育相が、密植栽培によってどのような影響を受 けるか、とくに生育前半における総籾数、葉面積などの生産と出穂期前後の受光態勢 について物質生産の面から検討した。  その結果、寒地稲の密植栽培は生育期節の促進、生育量の早期確保、総籾数・葉面 積の確保および葉面積/籾数比の向上が認められた。  草姿と葉層構造の変化は受光態勢を不利にするようなことはなかった。しかし出穂 後の乾物増加量は密植が低く、葉面積の減少度も著しかった。  葉身窒素含有率の密度間差は出穂期ころに大きく、密植が低かったが、窒素施肥量 の増加によってその密度間差は縮少した。したがって密植による後期乾物生産力の低 下は、生育後期の窒素欠乏と密接な関係にあることが示唆された。これは暖地稲の場 合と異なり寒地稲の特徴と思われた。密植栽培は寒地稲作にとって有利であるが、そ の欠点を改善するような技術も補う必要があるものと思われた。


全文(PDF)