農業研究本部

寒地稲の子実生産の解析的研究
2 栽植密度と施肥法が生産態勢と子実収量に及ぼす影響

竹川 昌和

北海道立農試集報.32,8-17 (1975)

 寒地での密植稲は生育期節の促進、生育量の早期確保、受光態勢の改善などの有利 な面が多いが、一面において生育後期の窒素欠乏、物質生産力の低下、登熟の停滞な どをともなう。この弱点を改善するために、栽植密度と施肥法を組合わせて1967年か ら4カ年検討した。  その結果、寒地における密植稲の生育後期にみられる生産力の低下は、窒素欠乏に ともなう圃場同化能力の低下と密接な関係にあった。この時の生産力低下は基肥窒素 増施によって改善される場合もあるが不安定であった。しかし止葉期の窒素追肥によ って密植稲の生産力は向上し、安定して高い収量が得られた。  すなわち60kg/a程度の安定した収量を得た時の生産態勢は出穂期が8月はじめ、 籾数が3.5~4.0万/㎡、LAI(葉面積指数)が3.0~4.0、葉身窒素含有率が3.0~4.0% であった。  これは密植によって受光態勢の劣悪化がなく籾数と葉面積が確保されたことと、止 葉期追肥によって出穂後の稲体の機能が維持されたことによって得られたと考えられ る。したがって密植によって前期の生産要因を確保しながら後期栄養を維持すること が北海道では必要である。その手段として追肥があるが、土壌条件などによって後期 に栄養補給の容易な場合には追肥を組合わせる必要性は少ないであろう。


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