農業研究本部

イネ葉鞘褐変病の発病過程と病原細菌の増殖

宮島 邦之、秋田 忠彦

北海道立農試集報.32,53-59 (1975)

 本病の発生時期は、品種・移植時期および施肥量にかかわらず、穂孕期以降に認め られる。また、イネの生育時期別に種々の温度条件下で人工接種した場合でも、同様 に穂孕期以降にだけ発病が認められる。  一方、病原細菌は病徴が認められる約1カ月前からイネ体上で生存している。すな わち、6月中旬には田面水に垂れている枯死葉身とその葉鞘から、7月上旬には外観 健全なイネ体からも検出された。また、この時期のイネ体での生存日数は14~20 日、田面水では21日間であり、イネの生育stageにおける病原細菌の密度は、分け つ期・幼穂形成期では102~l03/gを保っているが、穂孕期から黄熟期のイネでは106 ~1011/gとなった。  これらのことから、本病原細菌は、穂孕期以前は健全なイネ体上や枯死した葉身や 葉鞘で腐生的に生存し、穂孕期以降、旺盛に増殖活動をして寄生的能力を表わし、発 病をもたらすと結論される。


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