農業研究本部

小麦新品種「タクネコムギ」の育成について

尾関 幸男、佐々木 宏、天野 洋一、土屋 俊雄

北海道立農試集報.33,21-30 (1975)

 「タクネコムギ」は1965年、北海道立農業試験場北見支場(現北見農業試験場)小麦 育種指定試験地で、「東北l18号」×「北系22l」の交配を行い、以後同場で系統育種 法によって育成された秋播小麦である。  1969年「北系494」の系統番号で特性検定試験に編入、1970年「北見30号」の配付系 統名を付し、系統適応性検定試験、奨励品種決定調査により全道各地の適否を検定し た。1974年3月の北海道種苗審議会をへて、同年12月農林省に新品種として登録(小 麦農林115号)、短稈を意味するアイヌ語をとって「タクネコムギ」と命名され北海道 の奨励品種に採用された。  対象品種「改良伊達早生」なみの早生で、「ムカコムギ」より7~10日早熟、 15㎝短稈で耐倒伏性強く、「ムカコムギ」と同程度の耐冬性を有する。「改良伊達 早生」より多収で、多肥または密播では「ムカコムギ」なみの収量性を示す。外見品 質すこぶる良好、高たん白で、アミログラムの最高粘度は高い。伊達地方では「改良 伊達早生」におき代えうるとともに、主要麦作地帯では中生種と適宜配合して作付け ることにより、雨害の危険分散、コンバイン、乾燥施設の有効利用がはかれる。


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