農業研究本部

水稲の冷害に関する栽培学的研究
1 冷温処理装置について

天野 高久

北海道立農試集報.34,1-7 (1976)

 水稲の冷害研究をおこなうために、圃場で使用しうる簡便な冷温処理装置を考案し た。  1つは冷水灌漑装置である。これは、地下水と河川水をくみ上げる2台の揚水ポン プ、それらの異なる温度の水を撹拌する大型水槽、その水を水田に灌漑するパイプ、 および所定の水深となるよう水田内に設置した木枠からなっている  水槽の水温はレベルスイッチとサーモスイッチによって自動制御される。  実験の結果、設定温度が11~16℃の範囲内では、水深27㎝、面積30㎡の木 枠内の水を±0.5℃の精度で一定温度に維持することができた。  他の1つは、1茎ずつ葉鞘を含む穂部を冷却する装置である。これは空気を所定の 温度に冷却する空調装置、葉鞘を含む穂部を覆う円筒型の透明プラスチックジャケッ ト、および送風断熱パイプからなっている。10本のジャケットには5本ずつ2段階 の温度の空気を送ることができ、また、車輪がとりつけられてあるので圃場で使用す ることができる。  実験の結果、ジャケット内温度は、外気温が10℃以上日変化する場合でも、2~ 3℃以内の変動で所定の温度に維持された。これらの装置を使用することによって、 圃場で養成した稲に不稔を誘導することができた。


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