農業研究本部

晩秋から早春にかけての牧草の生育特性と肥培管理
3 模擬的越冬実験による越冬、再生過程での施用窒素の動きについて

山神 正弘、奥村 純一

北海道立農試集報.34,41-50 (1976)

 オーチャードグラスに対する秋施肥の効果について、越冬前に吸収された窒素の萌 芽再生時における意義を検討した。  人工気象箱を用いた模擬的越冬条件下で、土壌中の残存窒素の再生過程での影響を 無くするために砂土を用い、越冬処理前に土壌中の残存窒素を洗い流し実験を行なっ た。  その結果、越冬前に吸収された窒素のうち萌芽時に利用される形態はおもに株部の アミド態窒素であることがわかった。したがって秋の施肥は、その施用された窒素が 吸収利用されて株部が肥大し、越冬直前に株部のアミド態窒素の蓄積が多くなるよう な時期、すなわち9月中旬から10月上旬に行なう場合に効果が大きいと考えられる。 しかしアミド態窒素は全窒素の30%程度を占めるにすぎないので、体内成分として の窒素の翌春収量に対する効果を過大に評価することはできない。  9月中旬より前の施肥は、株部を肥大させるものの、茎葉の伸長が旺盛で茎葉部へ の施肥窒素の配分も多く、またその茎棄は越冬前後に枯死脱落する部分が多いので、 越冬前の株部のアミド態窒素の蓄積が少なくなり、再生のごく早い時期に窒素不足を きたすと考えられた。


全文(PDF)