農業研究本部

北海道におけるダイコン萎黄病と病原菌

石井 忠雄、谷井 昭夫

北海道立農試集報.34,51-58 (1976)

 昭和47年、著者の1人石井は北海道広島町においてダイコンの生育障害を見い出 した。  症状は茎葉部が下葉から黄化し、根部は導管部が黒褐色に変色して、一見ホウ素欠 乏に類似する。  しかしホウ素などの徴量要素を土壌に施用しても、本生育障害は回避されず、クロ ールピクリンによる土壌殺菌に著しい障害回避の効果が認められた。また変色した導 菅部からはFusarium菌が容易に分離されて、これの接種試験によって同じ症状が再現 され、同一菌が再分離された。  この菌の形態は、菌糸は白色綿毛状で隔膜を有し、小型分生胞子は卵形で、短担子 梗上に擬頭状を呈して多数形成され、大型分生胞子は三日月形を呈し、1~3個の隔 膜を有して、その先端は鋭いクチバシ状を呈する。接種試験の結果、ダイコンのみに 強い病原性を示した。  以上の結果から、本生育障害はFusarium oxysporum(Schi.)SNYD.et HANS.f.ra -phani KEND.et SNYD.に起因するダイコンの萎黄病と同定された。


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