農業研究本部

エゾヤチネズミによるリンゴ樹の被害について

水島 俊一

北海道立農試集報.34,59-66 (1976)

 1972年4月から記号放逐法によって、野ネズミ類個体群の調査をしていた北海道長 沼町の果樹園(約0.5ha)で、1974年春に野ネズミによるリンゴ樹の大きな被害がみつけ られた。被害量を表わすために、樹幹における食害面積を5段階の被害程度基準によ って調査し、それに基づいて被書程度指数を算出した。  1974年春の被害程度指数は成木(15年生、59本)で44.1幼木(5年生、65木)で83.1で あったが、1975年春にはそれぞれ8.2と12.9であった。  この調査地ではエゾヤチネズミ、エゾアカネズミ、カラフトアカネズミ、ハツカネ ズミの4種が捕獲された。そのうちエゾヤチネズミが最も多数生息し、また加害種で あろうと判断され、その捕獲数は1973年に133頭、1974年には104頭であった。  1974年および1975年春にみられた被害量の違いの原因を知るために、いくつかの要 因を考察した。  ネズミ個体群の変動の様相およびその越冬率に関係したであろう冬の積雪状態はそ れぞれの年において異なっていた。また1974年秋にこの果樹園では忌避剤が散布され ており、それが被害回避に役立ったのではないかとも考えられた。しかし上記の要因 のうち、どれが直接に作用したかは判定できず、それらを含めたいくつかの要因が相 互に関連して作用したのであろうと考えられた。


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