農業研究本部

北海道の農耕地における銅、亜鉛含量とそれらの抽出率に関する若干の検討

鎌田 賢一、水野 直治、兼田 裕光、目黒 孝司

北海道立農試集報.35,53-63 (1976)

 北海道の農耕地(作土)を泥炭土を除いて低地土(沖積性堆積の土壌)、台地土(洪積性 堆積および残積性の土壌)、火山性土の3土壌に大別し、それらの銅、亜鉛含量ならび に各種抽出液による抽出割合などについて検討した。  その結果、全銅含量の平均値は低地土≒台地土>火山性土の順位であり、低地土、 台地土の水田、畑については差異がみられなかった。土壌からの銅の抽出割合は0.1N 塩酸の方が1N酢酸アンモニウム(pH4.0)よりも土壌による差異がみられたので、そ の要因をさらに検討した。  3土壌とも0.1N塩酸抽出銅の抽出割合と0.1N塩酸抽出液のpHの間に高い負の相関 があった。低地土ではさらに前者と全カルシウム含量との間に負の相関があり、火山 性土では同じく前者と1N酢酸アンモニウム(pH4.0)抽出アルミニウム濃度、ならび に腐植含量との間に高い負の相関があったが、全カルシウム含量とは無相関であった。  また、那須火山帯と千島火山帯の火山性土間では1N酢酸アンモニウム(pH4.0)抽 出アルミニウム濃度と0.1N塩酸抽出銅の抽出割合、さらに腐植含量に相異があった。  この要因としては、那須火山帯の火山性土は道南の一部を除いて主に軽石の砂質土 が主体であり、千島火山帯の方は主に黒~黒褐色の腐植の多い灰状のものであったと いうことがあげられる。全亜鉛含量は3土壌間には余り差異はみられないが火山性土 はやや低い傾向にあった。土壌からの亜鉛の抽出割合は0.1N塩酸、1N酢酸アンモニ ウム(pH4.0)ともにほぽ同じ値を示した。また、0.1N塩酸抽出亜鉛の抽出割合と 0.1N塩酸抽出液のpH、1N酢酸アンモニウム抽出アルミニウム濃度のそれぞれの間に 相関はなかった。


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