農業研究本部

トマトの生育・収量におよぼす環境要因の影響
5 苗素質について

相馬 暁、岩渕 晴郎

北海道立農試集報.43,31-41 (1980)

 トマト苗の生育ステージを表現する形態的指標としては葉/茎比が最も適切な指標であり、苗体内のC/N比、蛋白態窒素濃度など栄養生理的指標とも密接なつながりを持っていた。すなわち豊富な水分とN優位の状態の葉/茎比が5以上の若苗は、定植後の発根力に優れ、旺盛な養水分吸収をもたらすが、栄養生長過多傾向となり、尻ぐされ果、乱形果の多発などにより収量は不良となった。  一方、N吸収が低下し、炭水化物が多量に蓄積した状態の葉/茎比3以下の老化苗は、定植後の栄養生長が衰退し、上位果房の着果数の減少や果実肥大の抑制を受けると共に、アミトマトや軟弱果の多発をうながし、ある程度の早期収量は得られるが、全収量は低下した。  それに対し、同者の中間のN吸収がやや低下し、炭水化物の蓄積が始まった状態の葉/茎比3~5程度の苗は栄養生長と果実の着果・肥大のバランスがとれ、全収量が良好となり適生と思われた。なお葉/茎比3~5の適生苗は一般的な育苗によると、育苗日数55~60日程度で、第一果房の開花始~開花期に相当した。


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