農業研究本部

ファージ法によるイネ葉鞘褐変病菌(Pseudomonas fuscovaginae A.Tanii,K.Miyaijima et T.Akita)の生態

宮島 邦之、相馬 暁、岩渕 晴郎

北海道立農試集報.43,42-51 (1980)

 東北地方および北海道で分離した葉鞘褐変病菌92菌株は本病原細菌の3系統のファージに対する感受性によって4群のLysotypeに類別され、そのなかでA群は地域分布が広かった。このA群に寄生性のあるFP1(P1)ファージを用いて本病原細菌の検出法とその応用を試みた。本病原細菌がペプトン培地中で他の細菌数と混在する場合に、ファージの増殖は雑菌数が多いほど抑制される傾向にあるが、病菌類が10/mlまたは10e2/mlあれば雑菌数が10e5/mlレベルであってもファージは24時間後には10e5/mlおよび10e7/mlまで増殖した。このファージ法によって、人為接種、自然感染したイネおよび畦畔雑草などでの本病原細菌の動向を検定した結果、本病原細菌は外観健全な分けつ期・減数分裂期のイネやヌカボ、ケンタッキーブルーグラスから検出された。したがって本病原細菌は外観健全なイネで腐生的な着生菌として生存し、穂孕期に達したときに寄生菌として増殖発病すると考えられた。


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