農業研究本部

強粘質水田土壌の物理・化学的特性と生産力向上に関する研究
V.稲わら施用に伴なう水稲の初期生育阻害要因の解析

前田 要、南 松雄

北海道立農試集報.46,41-50 (1981)

 稲わらの直接施用が水稲の初期生育障害に及ぼす影響を2種類の土壌(グライ土,褐色低地土)を用いて検討した。細粒質なグライ土は中粗粒質な褐色低地土に比べ稲わら施用に伴う水稲の生育障害が強く出現し,かつその後の回復程度も明らかに劣った。とくにその傾向は常温(20℃)よりも低温(17℃)条件下で顕著に認められた。一方,水稲生育障害の主要因は稲わら中に含有されるポリフェノール系化合物に起因する度合が強く,窒素飢餓および2価鉄の関与は付随的なものであろうと推察した。このポリフェノール系物質の生成は両土壌とも日平均積算地温200~300℃でピークがみられ,しかもグライ土は褐色低地土に比べて濃度が高く,かつ残存期間の長い特長を示した。さらに,同一濃度でもグライ土の方が阻害程度が大きいことから,いわゆる有害物質に対する水稲の生育障害抵抗性が土壌の種類によって異なることが明らかとなった。


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