農業研究本部

秋播小麦の雪腐病抵抗性と耐凍性育種  III.低温順化に関する品種の生態的特性と抵抗性との関係

天野 洋一、長内 俊一

北海道立農試集報.50,83-97 (1983)

 秋播小麦の25品種系統を用い,訓子府と岩見沢で越冬前後の生育量と体内成分の蓄積量を比較した。調査した20形質のほとんどは場所,時期,品種および越冬型間に有意性があり,訓子府では生育量は小さいが水分が少なく、炭水化物や糖の蓄積が多く,その消耗も少なかった。越冬前に蓄積の多い品種に越冬後もなお多量の炭水化物を維持した。浸透価は耐凍性と,リン酸と脂質は Sclerotinia borealis と,蛋白態窒素と全炭水化物は Typhula spp. と Fusarium nivale 抵抗性との間にきまめて高い相関を示した。越冬前後の22形質の主成分分析により,品種の生態的特性を4群に分類したが,これは前報の越冬型 (A,非耐冬型: B,耐凍型: C,中間型: D,耐雪型) とよく一致した。耐雪型で, Typhula spp. および F. nivale 抵抗性の"C.I.14106", "P.I.172582", "P.I.173438" は炭水化物や糖の蓄積がきわめて多く,蛋白態窒素,リン酸,脂質が少なく,浸透価も低かった。これらの特性は遺伝的特異性に基づくものと思われた。


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