農業研究本部

草地土壌の酸性化に伴うアルミニウム溶出と牧草生育

宝示戸 雅之、佐藤 辰四郎、高尾 欽弥

北海道立農試集報.50,43-53 (1983)

 異なる窒素質肥料(硫安,塩安,尿素)を用いたN用量試験(年間6,12,24kgN/10a)によって,草地土壌の経年化に伴う土壌化学性変化の実態を明らかにし,それらと牧草生育の関連を解析した。草地土壌は繰り返し表面施用される肥料に随伴するアニオンの作用で塩基が流亡し,表層が著しく酸性化した。酸性化の進行に伴い表層の土壌溶液にはアルミニウム(Al)が溶出した。その濃度はN施用量に比例して増加し,施肥後の期間,土層深,および土壌含水比に反比例し,最高50ppm以上に達した。その結果牧草生育は抑制されたが,その直接要因は牧草のP吸収抑制にあった。すなわち,酸性化区では土壌溶液のP濃度および牧草根部のP含有率が高く,牧草根面に多量のAlが付着している反面,牧草体(地上部)のP含有率が低いことから,土壌の酸性化に伴って溶出したAlが牧草根面でP吸収を抑制しているものと考えられた。


全文(PDF)