農業研究本部

ホウレンソウの土壌病害とその発生に関する土壌肥料学的考察
1.札幌市における土壌病害の発生実態と俗称「鎌いらず」症の原因について

赤司 和隆、阿部 秀夫

北海道立農試集報.53,9-19 (1985)

 1984年にホウレンソウの道内最大産地である札幌市内45ケ所の現地圃場において,土壌病害と思われる根腐れ症状の発生程度とその病原菌を調査した。発病率は6月の低温期では2%以下と低かったのに対し,8,9月の高温期では20%近くにまで及んだ。罹病株から主に分離された4種の糸状菌のうち, Pythium は低温期の子葉期株から,一方 Aphanomyces は高温期の子葉,中期株から,また Fusarium は同期の中,後期株からそれぞれ多く分離された。なお, Rhizoctonia の分離率は最も低かった。これら4菌の一部の菌株はホウレンソウに対して病原性が認められた。さらに,生育中,後期に主根部が全体的に褐変して細くなり,しばしば地際部から切れるため,現地では「鎌いらず」と称され,原因不明とされていた障害は Aphanomyces cochlioides Drechsler による根腐病であることが判明した。


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