農業研究本部

経年草地の炭カル表面施用に伴う施肥窒素の動態

三木 直倫、高尾 欽弥

北海道立農試集報.53,21-31 (1985)

 表層土壊のpHおよび集積有機物量とその分解程度の異なる3種の経年草地を供試して,炭カルの表面施用が施肥窒素の動態,牧草生育に及ぼす影響を検討した。炭カルの表面施用によって施用当年は若干の収量低下を招くが、翌年以降は無施用区より明らかに高収となった。この低収化現象は表層土壌中の未分解有機物量の多い低pH草地で大きく,3番草にまでも収量低下が認められた。圃場での施肥窒素の揮散量は炭カル表面施用で増加するが,その揮散率は0.3%程度であった。炭カル表面施用によって土壌中無機態窒素含量は無施用よりも少なく推移し,この現象は低pH草地で顕著で3番草に至っても認められた。一方,有機態窒素含量は逆に増加し,特に集積有機物の窒素含有率が高まり,施肥窒素の有機化が大きかった。したがって,炭カル表面施用時の収量低下の原因は,施肥窒素の揮散よりも,集積有機物の分解に起因する施肥窒素の有機化の影響が大きいものと推定された。


全文(PDF)