農業研究本部

採草地における植生推移と土壌養分環境の関連性について

大村 邦男、赤城 仰哉

北海道立農試集報.53,33-42 (1985)

 チモシー,アカクローバ混播草地を対象に,植生の推移と土壌養分環境との関連性について検討した。草地の経年過程で侵入する草種の中で,クサイ,広葉雑草は適正な肥培管理により防除できるが,レッドトップ等のイネ料草の侵入は避けられず,草地の経年化に伴ってチモシーが減少し,侵入イネ科草が増加する傾向がみられた。このような退行的な遷移は,チモシーが再生力,低養分耐性に劣ることと,随伴マメ科牧草の生育年限が短いことに起因しており,オーチャードグラス主体の混採草地の植生推移と異なる傾向を表わした。侵入イネ科草の栄養特性として,レッドトップは低りん酸耐性,ケンタッキーブルーグラスは低カリ耐性に勝ることから,土壌中の当該各成分の不足は,これら草種の優占を招くものとみられた。以上のように,草地の植生は草種の生育特性と土壌養分環境を反映しており,植生調査による土壌養分診断が可能であると考えられた。


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