農業研究本部

ホウレンソウの土壌病害とその発生に関する土壌肥料学的考察
3. 萎ちょう病の病原菌と発生圃場の土壌養分実態

赤司 和隆、前田 要、関口 久雄

北海道立農試集報.55,53-62 (1986)

 札幌市近郊の24圃場について夏作ホウレンソウを対象に萎ちょう病の実態調査を行った結果,17圃場でその発生が認められた。罹病株では地上部の萎ちょう黄化に加え,主根,側根および導管部の褐変が観察された。このような罹病株から分離された Fusarim 属菌7菌株についてホウレンソウに対する病原性を検定したところ,いずれの菌株も病原性を有していた。このうち3菌株については形態観察および宿主特異性の検定結果から Fusarim oxysporum f.sp spinaciae と同定した。萎ちょう病多発生圃場では概して連作年数が多く,また硝酸態窒素,有効態りん酸の集積並びにカリ過剰による苦土・カリ比の低下が認められた。さらに圃場内の発生地点では正常地点に比べ上記のような土壌化学性の悪変傾向は著しく,加えて土壌の酸性化が認められた。このような土壌条件下では,生育阻害に伴う病害抵抗力の低下によって萎ちょう病の多発生が助長されるものと推察された。


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