農業研究本部

Aphanomyces cochlioidesによる連作テンサイの生育阻害について  Ⅱ テンサイの初期生育に及ぼす連・輪作土壌中の菌密度の影響

清水基滋

北海道立農試集報.67,65-71 (1994)

 土壌中におけるAphanomyces cochlioidesの卵胞子密度と、テンサイの苗立枯率の間には正の相関が見られたことから、本報告では苗立枯率によって土壌中の菌密度を評価した。  テンサイ移植前の輪作および連作土壌中の卵胞子密度を比較すると、後者の方が明らかに高かった。接種によって土壌中の卵胞子密度を変えてテンサイを栽培すると、卵胞子密度が高い土壌の方が、より強くテンサイの生育を阻害した。また同一菌量であっても、テンサイの苗が若いほど生育の抑制程度は大きかった。圃場への移植直後のテンサイの根圏は、紙筒とともに育苗時の無病土に包まれているが、この紙筒内へのA.cochlioidesの侵入時期も、卵胞子密度の高い土壌に移植した方が早かった。紙筒内へ侵入後、紙筒内土壌中の本菌密度は、紙筒外の根圏土壌以上に高くなった。本菌はこの紙筒内で側根への感染を慢性的に繰り返し、テンサイの初期生育を阻害しているものと考えられる。A.cochlioidesの側根への感染は輪作テンサイでも見られるが、卵胞子密度が低い輪作土壌では本菌の紙筒内への侵入および側根への感染時期が連作土壌に比べ遅いため、生育阻害の程度が軽微になり、両圃場における初期生育の差として現れるものと考えられる。  以上のことから、連作によるテンサイ移植前土壌中のA.cochlioidesの卵胞子密度の増加とそれに伴う感染時期の早期化が、テンサイの初期生育をより強く阻害し連作障害として発現するものと考えられる。


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